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美学校時代の友人手塚賢至君についてのページです
彼は最近こんな活動をしています。屋久島に行ったときなど
立ち寄ってください。 武藤

 

 

(↑デッサン 季刊生命の島「山尾三省 追悼特集」より転写)

 

(以下はヤッタネ通信からの抜粋です。)

                                

 

                                      

文章そのⅠ 

 第48 日本生態学会

2001年3月26日~3月31日

会場 熊本県立大学(熊本県)  

ヤッタネ! 調査隊 学会初デビューのてんまつ

                  手塚賢至  

 

 世に学会なるものが存在している事は知ってはおりましたが、研究者でもない私がそのような場で発表するなどとは、人生わからないものです。3月27日の自由集会と28日のポスター発表を行いました。私はことさら学問などを探求した事もないので、学会と聞いて一瞬身を引いたものの、根っからの物好きには違いなく、それにヤクタネゴヨウのためなら今や学会だろうが国会だろうがなんでもやっちゃるとの鼻息で見境が無いのです。とはいえ、門外漢の身、そこそこ大人でもありますから、まあせめて生態学者が集う場の雰囲気だけでも嗅いで来ようと、静々と出かけたわけです。

 所は熊本県立大学、前身は女子大のこじんまりとした清楚なキャンパスです。しかし会場は大変な熱気。若者が多くて活気に満ちています。夏のフィールドワーク講座(上屋久町主催)にこ参加した学生、院生にこも何人か声をかけらけられました。生態学とひと言で言っても分野が多岐に渡り、例えば27日の口頭発表は24分野の24会場分かれて、13:30から17:30まで15分毎に行われ、28日も同じくですから、それはおびただしい数の発表が行われます。27日の自由集会は17:30から8会場に設定され、皆さん自分の日当ての気になるセッションの会場に入場していきます。自由集会は企画者

が立案したテーマの呼びかけに応じた関連の研究者による集会の場です。

 さて、私の参加した自由集会テーマ、企画者、演題、発表者、そして主旨(抜粋)は以下のとおりです。

 

テーマ 「絶滅危惧種ヤクタネゴヨウは今ー屋久島における現況一」

企画者 金谷整一(森林総合研究所)小林剛(森林衰退研究センター)

演題

1 ヤクネゴヨウについて
金谷整一(前出)

2 ヤクタネゴヨウとマツノ材線虫病
中村克典・秋庭満雄(森林総合研究所・九州〉

3 一屋久島の水・大気環境
永淵修(福岡県保健環境部)

4 ヤクタネゴヨウの生理生態的特性
久米篤(九州大・演習林)

5 「ヤクタネゴヨウ調査隊」活動報告
手塚賢至(鹿児島県上屋久町・ヤクタネゴヨウ調査隊)

 近年、絶滅の危険性の高いヤクタネゴヨウを保全していこうという気運が高まりつつある。ヤクタネゴヨウの保全条件の確立には、現存する生残個体の分布場所と個体数ならびに衰退過程と衰退要因についての知見の集積が必要不可欠である。本集会では、最近行われているヤクタネゴヨウの衰退に関する研究内客を報告するとともに、生残個体の分布位置図の作成を目的としで地元の有志者によって結成されたNGO組織「ヤクタネゴヨウ調査隊」の活動について紹介する。

 私はヤッタネ!調査隊の活動をスライドを映しながら説明しました。しかし不覚なことに、君の出番は最後で会場は暗い。次第に眠くなってくる。なにしろ前夜あたふたとスライド選定に熱中するうちに眠れなくなって、肝心の本番時には発表しながら睡魔とのたたかいとなり、意気込みの割には精彩を欠いた発表に終始してしまいました。

 

  

  

 

文章そのⅡ 

付録……全労済に提出した2000年度 環境問題助成事業

    活動報告書の末尾の文章です。

 

     お わ り に

 ここに2000年度(2年目)の活動報告を上梓出来たことをまずは喜びたい。

二年間にわたり、活動助成いただいた全労済環境問題助成事業に深く感謝する。

 昨年同様年間を通した月1回の定例調査に加え、予備調査や追跡調査によってその成果をより着実なものにした。また、小規模ながらも地元屋久島で発表の場を持つ事が出来た。そして、2001年3月には日本生態学会の自由集会「絶滅危惧種ヤクタネゴヨウは今-屋久島における現況-」において活動報告を行った。こうした調査と啓蒙というふたつの活動を、全労済及ぴ屋久島環境文化村財団の助成を受けて行うことができたことは感謝に絶えない。

しかしながら、調査はまだ全体の1/5であり、啓蒙潜動ももっと広く行わなければならない。

 今後ともますます、民、官、学の協働、連携が重要になってくるであろう。林野庁九州森林管理局より委託を受けた社団法人林木育種協会の「ヤクタネゴヨウ増殖・復元緊急対策事業」、森林総合研究所の「ヤクタネゴヨウの遺伝的多様性保全に関する研究」、いずれにもヤクタネゴヨウ調査隊のデータは必要とされており、調査隊としてもこれまで同様協力を借しまない所存である。

 また、松枯れの原因究明についても、マツノザイセンチュウ被害や、特に近年調査データが蓄積され実態が明らかにされつつある大陸飛来の大気汚染物質に関する研究への調査協力体制を築き上げる必要など、ヤクタネゴヨウの保護、保全に係わる様々な分野を視野に入れ現状把握に協力していきたい。

 大気汚染については、ヤクタネゴヨウのみならず屋久島全体の生態系に及ばす影響への視点も欠かせぬであろう。

 このように私達ヤクタネゴヨウ調査隊の活動は、地元住民による生体木調査を出発点としながら、今では広範囲な展開を持ちつつある。

 こうした基盤を軸に、これからは志をおなじくする他地域のNGOグループとの交流も進めていきたい。すでに2001年11月、長野県飯田市で、ヤクタネゴヨウと同じく絶滅危惧種とされる、ハナノキの保護活動を行う‘はなのき友の会’の活動地域を訪れた。自生地の現状と活動概要を教示いただき、今後お互いの活動への協力と情報交換を密に行うことの大切さを確認する事が出来た。目的はひとつなのである。

 こうした地域の環境と生態系を守るための活動が点から線、線から面へとさらに連帯していく事により、結果として地球の環境、生態系の保全へ貢献していける道筋だと確信している。

 ヤクタネゴヨウ調査隊の活動はすでに3年目に入っている。当初漠然としていたものが、活動を継続させていく事により、次々に広がり、深まりを待って明らかになってきている。それもこれも、急峻な山中での調査に参加した隊員一人一人の一歩一歩の足跡が、絶滅の危機という何事かの発端から何処へという成果を導いていくための礎であるのには違いない。又、実際の調査に参加出来なくても調査隊の活動を応援して下さる方々の存在が私達の活動を後押ししてくれている。

 様々な支援に感謝し、その賜物としてのヤクタネゴヨウ調査隊は、これからも地域に根ざしながら、なおかつ広い世界性を目指した活動を持続させていきたいと願っている。

文責:ヤクタネゴヨウ調査隊

代表 手塚賢至

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