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道中日記 7

4月22日

朝6:30、目覚む。カーテンを開けたまま寝た窓に、山の緑刻々と明るむ。清々し。 ナカジ帰らず。山崎開口いちばん“あーやだ、爪にそば粉が詰まってる”なんでこんなに蕎麦ばっかり打たなきゃいけないんだろう、と長大息。3人で大笑い。

9時起床。ナカジ燻製小屋で瞑想して寝た由。その燻製小屋を見せてもらう。飛魚を土産に戴く。隣の志朗宅を訪ねる。作業小屋を製作中の由。天窓の朝の光、浄福のごとし。志朗、ケンジ(本名は孝雄)、両名北海道出 身。諏訪之瀬でぜひ蕎麦打ちをの要望。卓上に山茱萸の花。庭の犬、日向にいて日向のごとく動く。

正午、辞去。晴天、木もれ陽の道を車で抜ける。李政美の 話。浜の水澄み渡る。かぼちゃ屋。屋久島仕立てつけ麺。ようやく勘定を払う。時計草ジュース飲みそびれる。

午後1:20、ナカジを残して宮ノ浦港発。展望室“HIBISCUS”に陣取る。海のいろ濃し。船首のしぶきに虹消長す。飛魚とぶ。澪はてしなく屋久島の影かすむ。強風のため左舷のドア皆締切。港近づくにつれ曇る。甲板にてもがり笛聞く。

5:15、鹿児島港着。兼澤宅折しも浜辺の披露宴始まるところ。裸足の新郎新婦。火入れの儀式。黄砂による曇天の由。カイトと呼ばれる幼い男の子愛くるし。ビールの入ったコップを持って唄のような独り言。兼やん真っ赤なブリジストンのつなぎ姿。新郎鹿児島水産大学の後輩とか。火の勢い海風をうけて急。若い男女多し。開放的。ビール一杯戴いて辞す。

6:00、薄曇りのかはたれ時、海沿いを往く。日向なる待ちに山崎初恋のひと住む由。今は数学教師とか。

8時頃、霧島神宮前。長瀬真人(まひと)・登志子・犬の神(じん)に迎えらる。すぐそばの旅館・蓬泉館にて温泉。鄙びた薄暗い浴場に硫黄泉。打たせ湯。真人、中里繪魯洲を介して山崎と識った由。古津“登志ちゃんて何となくありすに似てる”、私には掛けてる眼鏡のせいか往年のアヌーク・エーメ(81/2だったか)が想起された。長瀬宅。天理教のために建てられ使われずに荒れていた家屋だとか。なま竹の子。薩摩揚げ。霧島神楽(焼酎)。竹の子御 飯。霧島の豆腐は固くてビニール袋入りで売る由。その揚げ出し。直さんベーコン、ケンジ燻製。灯りを消し、蝋燭を立て、あらためて山崎にHappy Birthday。

10時過ぎていきなり十割で蕎麦打つもうまくいかず、打つこと3回。山崎落 胆。神(じん)の芸、登志がホーと声をあげると応じて遠吠え唄のごとし。もういいよと言うとひたと止める。利発なり。庭先にひともと桜、花のこる。月清し。口琴(真人作)。はらっぱ祭り。無形の家での吉沢元治の通夜に来ていた由。1年前まで武蔵小金井に住む。その前は旅。いまだ旅の気分とか。この家は夏快適、乾燥がち。指つき靴下or手拭い、登志染めた由、 みやげに各自好きなのを選んで一枚ずつ手拭いをもらう。山崎足のおやゆびが大きすぎて靴下はいらず。真人・登志とも足のゆび長し。Macでサイババの似顔絵。祭壇の間に伊耶那岐命・伊耶 那美命の札。エチオピア皇帝の肖像。木に虹いろの目が宿る絵。太鼓の類多し。

明朝 8:45出で登志バイトの由。午前3時就床。

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