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 春の祈り 


 北半球では春分を境に、昼が夜の時間を上回る。
 植物達は、冬の眠りから目を覚まし、新たな命の活動を始める。
 この星の息とし生けるものは、彼等の作る生産に依存している。


人の悲しみや、人と人のいざこざは、
この事実の前では芥子粒ほど小さい。
人は過去の成果に縛られ、
とかく人は自らを縛ってしまい、
不健康ないのちの小さな枠に固執する。


だから、春の柔らかい太陽の前にその身を曝け出し、
植物達の造り出す新鮮な酸素で、洗い浄めなければならない。



人生は矛盾だらけ。

僕の思いなどグヂャグジャに曲げられ、
傷を痛がっていたら生きて行けない。
物を二重三重のベールを越しにか見ない術が、
すっかり身に付いてしまった。
たとえ見えたとしても何の対応ができなければ、
見ないのと同じことである。

嫌な奴ほど、じわじわ近寄ってきて、
友達面していつまでも長く居座る。
これは、喜劇を通り越しこれは悲劇である。



今年も桜がこの国をピンク色に染めながら北進する。
その後を追って、「萌え」が山を駆け登る。
巡り巡ってきた春。嬉しい嬉しい春。


僕はこの崇高な季節に祈らざるを得ない。
人々の放つ毒牙に侵された、この身と心を清めておくれ。
あなた達の健康な生命の力で、立ち直らせておくれ。
と。
 2008 4/2 Mamoru Muto 

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