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かき・柿


 

里ふりて柿の木もたぬ家もなし

松尾芭蕉



 

柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 

正岡子規

 

 

院長のうしろ姿や吊し柿   

大木あまり

 

 

御所柿のさも赤々と木の空に 

上島 鬼貫



  

つり柿や障子に狂ふ夕日影  

 内藤 丈草

 





  

かき  [かきのき科]  Diospyros Kaki Thunb.  
 
日本の西南部の山中に自生するが、広く栽培される落葉高木、高さ3~9mとなり、幹は直立して多くの枝にわかれ、若枝には密に細かい毛がはえている。葉は新枝に互生し、短い柄があり、楕円形でとがり、全縁、裏面には褐色の毛がはえ、長さ7~17cm、晩秋に紅葉して美しい。6月頃、葉のわきに黄緑色の短かい花柄をもった花を開く。雌雄同株であるが、ときに雌推異株のようにみえるものもある。雄花は集散花序に数個ついて小さく、雌花は葉のわきに1個ついて大きい。がくは緑色で4裂する。花冠はつぽ状となり、先は4裂する。雄花には16本の雄しぺがあり、雌花には1本の雌しべと、退化した8本の雄しべとがある。果実は多肉の液果となり、熟すと黄赤色となる。品種によって形はさまざまである。甘がきと渋がきとあり、ともに食用とする。若い果実から渋をとる。一つの果実は八つの種子をもつが、全部が発育して完全な種子となるものは少ない。種子は長楕円形でひらたく、軟骨質の胚乳をもつ。材は堅く器具を作るのに使う。自生するものは、葉はやや小形で子房に毛があり、果実は小さく、栽培品の原種でヤマガキ(var.sylvertris.Makino)という。[漢名]柿  

-牧野植物図鑑-

 


 

 

 柿は日本原産の果物です。万葉集の柿の歌を探してみたが簡単には見つからなかったが、俳句には有名な句が多いので句を載せました。秋空の青に柿の赤は日本の色です。古来から柿はなくてはならない植物であった。甘味の少なかった昔、柿の甘さは貴重な甘味料ですし、渋柿からとった「柿渋」は凝固剤、補強剤としてさまざまな日本の道具を作ってきた。

 僕の田舎の会津では、甘柿より渋柿のほうが多いぐらいある。これは仕方ない、柿は南方系の植物だから南のほうが甘柿が多いのです。でも、東京にはあまり出回っていないが、「実知らず」という渋柿は富有柿のようにふっくらとして大きく、これを焼酎で渋抜きするととてもおいしんです。また、吊るし柿を天ぷらにして食べるのです。天ぷらの衣で甘味が緩和され、おいしいんです、塩をかけたり醤油をかけたりしてね。柿で甘味を付けた沢庵もいい。

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