すすき
秋の野の、み草刈り葺ふき、宿れりし、宇治の宮処みやこの、仮廬し思ほゆ
額田王
秋の野のみ草を刈って屋根を葺いて、泊まった宇治の宮処の仮の宿のことを思い出します。ここで「み草」は屋根を葺ふく、尾花・菅すげ・茅ちがやなどのことをいいます。
陸奥の、真野まのの草原かやはら、遠けども、面影にして、見ゆといふものを
笠郎女
みちのくの真野の萱原は遠くたって、心に思えば面影に見えるっていうのに。。。。どうして近くのあなたさまを見る事ができないの?
秋づけば、尾花が上に、置く露の、消ぬべくも我は、思ほゆるかも
日置長枝娘子
秋になると尾花(をばな)につく露のように、はかなく消えてしまいそうなくらいに、あなたさまのことを思っています。大伴家持に贈った歌です。
すすき(かや)
Miscanthus sinensis Anderss 〔いね科〕
各地の山野いたる処に多くはえる大形の多年草で叢生し,往々大群をなして山面を被うとが多く,嵩さ100~150cm位.根茎は短かく多脚的に分枝し,硬質で節は緊密,茎は直立して節があり,円柱形で緑色,無毛.葉は互生し細長く線形で,先端は次第に尖り,縁に細歯があってざらつき,緑色で中脈は白く,下部は長い鞘となって茎を包み,通常無毛であるが時にその下方のものに長い毛がある.秋,茎の頂に大きい花穂をつけ,細長い10数本の短枝を中軸から出し黄褐色または紫褐色を呈する.花穂の各節に2個の小穂を着け1は無柄で1は短柄.小穂は長さ3.5mm位,皮針形,下部に白い手があって,長さは小穂の1.5倍に達する.内外の2包頴は洋紙質,護頴と内頴は膜質でやや紫色をおび,内頴の先端が深く2裂し,小穂の3倍に達する芒がある.この変種にシマススキ,イトススキ,タカノハススキ等がある.花穂をおぱな(尾花)といい秋の七草の一つに数えられる.
〔日本名〕ススキはすくすく立つ木(草)の意といわれ,また神薬に用いる鳴物用の木,すなわちスズの木の意ともいわれる,またカヤは刈屋根の意で刈って屋根をふくの意であろうともいわれる.〔漢名〕芒.
-牧野植物図鑑-
秋の花で忘れてならないのはススキである。今でこそ萱葺屋根はなかなか見られなくなったが、萱葺の家こそ日本人の家の原風景ですし、ススキ野こそ里山の秋の原風景です。お月見のススキを飾るのは深い信仰があってのことです。マヤ文明が、葦ときっても切れないと同じことだと思います。
若いころ歩くことが好きで、夜調布の姉の家を出て西へ西へと歩き始めた。高尾駅で上州のやくざに酒をご馳走になったりして夜を明かし、そこからは電車で西へ向かった。最後に富士山までたどり着いた。紅葉も終わりの時期で、一面に薄の白い穂が広がりそれを眺めることでこの小旅行は終了した。またある時、帰卿する道を奥只見の山道にした。その時の薄は西日に輝き、山陰とのコントラストが美しく、白くまた金色に風に揺れる様は見事でであった。都留市の山の中、小春日和日と言ってももう大晦日ま近い頃風に揺れるススキを見ていて「明かり」の作品を作ろうと思った。
(守 8/4 2002)