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あしひきの、名負なおふ山菅、押し伏せて、
  君し結ばば、逢はずあらめやも     柿本人麻呂


あしひきの 山菅の根の ねもころに
  我はそ恋ふる 君が姿に        
作者不明


かなし妹いもを 何処いづち行かめと
  山菅の 背向
そがひに寝しく 今し悔しも   作者不明
                    
以上三句 万葉集


雨落に 藪蘭の花 渓鬼荘       右城暮石

藪蘭の うすむらさきに 長命寺   山尾玉藻

無住寺となりて 薮蘭ばかりかな    田原憲治

草箒もて 薮蘭のちり 払ふ     野木藤子




 



学名 : Liriope platyphylla
 Liriope : ヤブラン属
 platyphylla : 幅広の葉をもつ

 Liriope(リリオーペ)は、ギリシャ神話の女神に由来。



  



・ 薬効   せきどめ、去痰、利尿
・ 薬用部位 根
・ 生薬名 大葉麦門冬だいようばくもんどう、土麦冬どばくとう






10月26日の誕生花(薮蘭)

花言葉は「謙遜」(薮蘭)




や ぶ ら ん            [ゆり科]

Liriope graminifolia Baker(=L. platyphylla Wang et Tang))
 樹林の陰にはえる多年生草本。根茎は太く短く、かたい木質である。つるは出ない。ひげ根は細長く、時おりふくれた部分がある。多数の葉はスイセンと同じ型式にかさなって根もとにつき長さは50cm内外で、線形または線状皮針形で幅1cm内外、鈍頭で基部は細まって、不明瞭な葉柄になる。上面は深緑色で光沢があり、葉の上部は垂れ下がる。花茎は葉と同じ長さまたはそれより短かく、包葉は細かい。花は3~5個集まり、下には向かない。花被片は6,雄しべは6,花糸は屈曲していて、やくは長い。子房は上位,花柱は単一である果実は裸出した種子で、緑黒色.根は薬用に使う。
 〔漢名〕麦門冬または松寿蘭(植物名実図考)とするのは共に間違いである。次のリュウキュウヤブランと似ているが、花は少し小型で密生し、紫色がずっと濃い.また地下につるが出ないからすぐ区別出来る。
 〔日本名〕藪蘭はやぶにはえ、葉状がランに似ているからである。
-牧野植物図鑑-



竜の髭 ↓  
  僕は馴染みが全くなかったのですが、ヤズランは古名が山菅で万葉集にたくさん読まれています。最近では山菅はヤブランではなく竜の髭(りゅうのひげ)という説が有力ですが、今回はヤブランとして取り上げました。
 昔は分類学があった訳ではありません。万葉集の草花を現在の名前で特定出来ないもの多くあるのです。例えば朝顔はキキョウというのが有力です。また余談ですが、「葵」。下鴨神社に咲く、少し控えめな植物ですが、貴重な泉の守り神として、絶大な意味があったのです。その霊力にあやかったのが、徳川家の「葵の御紋」です。そして、葉っぱの形が似ているということだけで、中国から入ってきたタチアオイに「葵」という名前をつけてしまったのです。葵とタチアオイは全く違った植物です。   (ま)



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