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からたちと、茨刈り除け、倉建てむ、
   屎遠くまれ、櫛造る刀自 
             万葉集 忌部首(いむべのおびと)


道の辺の、茨(うまら)のうれに、延ほ豆の、
   からまる君を、はかれか行かむ
              万葉集 丈部鳥(はせつかべのとり)


我はけさ、うひにぞ見つる、花の色を、
   あだなる物と、いふべかりけり
                古今集 さうび 紀貫之


羽ならす、蜂あたたかに、見なさるる、
   窓をうづめて、咲くさうびかな
          志濃夫廼舎(しのぶのや)歌集 薔薇(さうび)
                橘曙覧 (あけみ 江戸末期)








薬効  便秘、利尿

薬用部位 花、実

生薬名「営実(えいじつ)」




  




5月30日の誕生花(野茨の花)
11月8日の誕生花(野茨の実)

花言葉は
「素朴なかわいらしさ」(野茨の花)
「無意識の美」(野茨の実)




──── 平安時代に中国から渡来した薔薇 ────


 平安時代に、唐土から渡来したものは漢語「薔薇」を音読して「しやうび」「さうび」と呼び、在来種の薔薇とは別物と見ていたようだ。

 『原色牧野植物大圖鑑』によれば、平安時代に渡来して賞美された薔薇は庚申(こうしん)薔薇、別名長春花(下の写真参照)。中国四川・雲南の原産。一年を通して何度も咲くので、隔月を意味する庚申月に因んだ名という。しかし最もよく咲くのは初夏である。


  


庚申(こうしん)薔薇          庚申薔薇から作出された紅薔薇




のいばら      (のばら)    〔ばら科〕
Rosa multiflora Thunb. (=R. polyantha Sieb. et Zucc.) 
 原野、河岸等にはえる落葉性の小形低木。茎は斜上あるいは直立して、盛んに分枝して繁みを作る。多くは無毛でなめらか、高さ2mぐらい。枝には鋭いとげが多い。葉は互生し1~4対の小葉をもった奇数羽状複葉。小葉は楕円形または広卵形、先端は鋭形、基部は鈍形または鋭形、無柄、ふちにはきょ歯があり、長さ2~3cmぐらい。上面は無毛で光沢はなく、下面には細毛を生ずる。托葉は皮針形で鋭く切れ込み、軟毛があって下半部は葉柄に沿着する。花は枝先に円錐花序を作って密集して開き、花径2cmぐらい、白色あるいは淡紅色をおび,芳香剤放って、初夏に開く。花柄は無毛、または少数の腺毛を生ずるがく筒はなめらか。がく片は皮針形でちぢれた毛を密生し、そりかえる。花弁は5、水平に開き、心臓形または広い倒卵形、頭部は凹む。黄色で多数の雄しべがある偽果は小形で果序に多数ついて、球形で赤く熟し、外面には光沢がある偽果は落葉後も残り、営実(漢名)といい薬用にする。
 〔日本名〕野薔薇。野外にはえるバラという意味。薔薇をイバラというのはとげがあるからで、イバラは元来とげのある低木の総称である。〔漢名〕野薔薇。
-牧野植物図鑑-



 今回は、茨(イバラ)、野バラを取り上げました。和歌は万葉集、古今集、江戸末期と明治以前のものです。ハマナスなどを加え、日本は薔薇の原種が何種類かあります。しかし、古代、茨は(うばら/うまら)と言われ、トゲがあり、花も派手ない事もあり、厄介者扱いだったのです。
 平安時代に中国から薔薇が入ってくるのですが、「せうび」「しょうび」と発音して、茨とは分けていました。しかし人々の評判は相変わらずで、評判なることはありませんでした。
 劇的変わったのは、明治以降、大輪の西洋薔薇が入ってきてからです。  (ま)


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