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あかねさす 紫野行き 標野行き
   野守は見ずや 君が袖振る      万葉集 額田王


紫草むらさきの にほへる妹を 憎くあらば
   人妻ゆゑに 我恋ひめやも    万葉集 大海人皇子


託馬野に 生ふる紫草 衣に染め
     いまだ着ずして 色に出でにけり  万葉集 笠郎女


筑紫にも 紫生うる 野辺はあれど
   なき名悲しむ 人ぞ聞こえぬ    新古今集 菅原道真






成長途中




根は太く紫色で「紫根(しこん)」と呼ばれ、名前の由来となった。これは紫色の染料や薬用に使われる。

・薬効 切り傷、やけど
・薬用部位 根
・生薬名 「紫根(しこん)」




  

紫根 1          紫根 2




 さびた赤みの京紫系の紫を『京紫 きょうむらさき』や『古代紫 こだいむらさき』というのに対し、『江戸紫えどむらさき』の冴えた青みの紫を、『今紫 いまむらさき』ともよばれました。




色見本

古代紫

#895b8a
京紫

#772f6d
江戸紫

#745399
今紫

#5b2856





できかけの実




む ら さ き       〔むらさき科〕
 Lithospermum erythrorhizon Sieb. et Zucc. 
 日本、満州、中国、アムールに広く分布する多年草、山地や草原にはえ高さ30~60cm、根は紫色で太く、地中にまっすぐのびてしばしば分岐し, その頂から茎を出す。茎は直立し、上部は枝分れして葉とともに斜上する長い粗毛が多い,葉は互生し皮針形で、先端と基部は次第に細まってとがり、ほとんど柄がなく全縁である。6~7月,葉のつけねの葉状をした包葉の間に白色の小さい花をつける·がくは5深裂し、裂片は広線形で長さ5mm位である.花冠は径4mm位、花筒の先端は5裂して平らに開き、筒上部には5個のりん片がある。雄しべは5本,雌しべ1本。果実は4個の分果にわかれ、分果は小粒状で光沢があり灰色、昔から根を薬用または紫色の染料として用い、栽培されることもある。従来用いられている漢名の紫草をこれにあてるのはあやまりで別種類である。
-牧野植物図鑑-



  

むらさきの実



 今回は紫草と書いて、ムラサキクサではなく単に「ムラサキ」と読む植物です。
 紫は洋の東西を問わず、自然から取るのが難しい染料でした。古代は皇帝や高位の僧侶、高位の貴族しか身に付けることが出来ませんでした。日本では大きく分け、平安貴族が愛した京紫と江戸時代の歌舞伎役者などが身につけた江戸紫がありました。
 栽培が難しく現在では絶滅危惧種に指定されています。 (ま)


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