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浅茅原 つばらつばらに 物思へば
 故りにし郷し 思ほゆるかも   大伴旅人
万葉集


戯奴
わけがため わが手もすまに 春の野に
  抜ける茅花
つばなそ 食して肥えませ
             紀女郎
きのいらつめ 万葉集


印南野
いなみのの 浅茅あさぢ押しなべ さ寝ぬる夜の
 け長くしあれば 家し偲
しのはゆ  山部赤人 万葉集


水無月
みなづきの 夏越しの祓する人は
 千歳の命 延ぶというなり   紀貫之 
古今和歌六帳


妙高の ふもとの茅萱
ちがや なびくなり
   頂きにして 雲うごくごと    与謝野晶子


禰宜くぐり ゆきし茅の輪へ 人なだれ   太田文萌





川原や草原、野原で 群生する。

初夏、白い毛を密生した花を  咲かせる。

 若い花穂を 「茅花(つばな)」と呼ぶ。甘味があり食べられる。





「茅の輪くぐり」



 この神事は神話上の人物である蘇民将来(そみんしょうらい)がスサオノミコトから「もし疫病が流行したら茅の輪を腰につけよ」といわれ、その通りにしたら疫病から免れることが出来たという故事に由来すると伝えられておりますが、 茅の霊力恐るべしです。









 ち が や   (ち、ふしげちがや)    〔いね科〕
Imperata cylindrica Beauv.  
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 郊外原野あるいは山地にふつうで、多数群を成して叢生する多年草。根茎は細長く、白色で節があり長く地中を横にはう。葉は細長く、茎とともに立ち質は硬く、幅1cm位、長さ30~60cm位ある。春の末に葉に先立って花穂を生じ、これをツバナ(茅花の意味) といい、後にその茎は長く伸びて葉の中から抽出し、茎の頂に円柱状花序をなし白毛を密生し褐色の雄しべが目立つ。花序は主軸から1~2回分枝し、各小分枝上の節に2個ずつ小穂をつけ長短不同の梗がある。小穂は長楕円形で長さ2.5mm位、総包毛及び内外の2包頴上の毛は長い白色の絹毛で、長さは15mm位あり、護頴と内頴は極めて小さく、芒を欠く。柱頭は2裂し、長く超出し、黒紫色の羽毛状で、絹毛にまざる。茎の節に白毛がある。白毛の無いものをケナシチガヤという。根茎を茅根といって薬用とし、子供等は若いツバナを食べることがある。
〔日本名〕 チなるカヤという意味で、チは千で草が叢生することからこういわれるのであろう。〔漢名〕白茅。
-牧野植物図鑑-






根茎は「茅根(ほうこん、ぼうこん)」と呼ばれ、 利尿薬として使われる。








 今回は茅萱です。万葉集の草花を出来るだけ載せたいのですが、歌に詠まれた草花が何なのか特定できないものたくさんあるのです。ここで取り上げなかった草花の方が少なくなりました。
 茅萱は神事ですね。夏越しの祓いの時「茅の輪」が設置され、健康を願う。そういう信仰があったので、万葉集に多く読まれたのでしょう。    (ま)






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