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玉たすき 畝傍の山の 橿原の ひじりの御代ゆ
生あれましし 神のことごと 栂の木の
いや継
ぎ継ぎに 天あめの下 知らしめししを
そらにみつ 大和を置きて あをによし
奈良山を越え いかさまに 思ほしめせか
あま離さかる 鄙ひなにはあれど 石いは走る
近江
あふみの国の 楽浪ささなみの 大津の宮に
あめの下 知らしめしけむ 天皇すめろき
神の命
みことの 大宮は ここと聞けども
大殿
おほとのは ここと言へども 春草の
しげく生ひたる 霞立つ 春日の霧れる
ももしきの 大宮ところ 見れば悲しも
         
万葉集 長歌  柿本人麻呂


みもろの、神なび山に、五百枝
いほへさし、
しじに生ひたる、栂の木の、いや継ぎ継ぎに、
玉葛
たまかづら、絶ゆることなく、ありつつも、
やまず通はむ、明日香の、古き都は、山高み、
川とほしろし、春の日は、山し見がほし、
秋の夜は、川しさやけし、朝雲に、鶴
たづは乱れ、
夕霧
ゆうぎりに、かはづは騒く、見るごとに、
のみし泣かゆ、いにしへ思へば
         
万葉集 長歌  山部赤人








建築材として:柱、土台、種々の造作材に用いられますが、鮮明な木理が通ったものは美しく、床柱、床まわり、長押、鴨居、敷居、天井板などに使われ、特に四方柾の床柱は銘木とされます。









 つ が   (とが,つがまづ)    〔まつ科〕
Tsuga Sieboldii Carr.  
 中部以南の山地に生ずる常緑の高木。枝がこんでいて又葉も密についている。幹は真直に立ち、大きいものは高さ30m、直径1mにもなる。樹皮は灰色で、深くたてに裂ける。1年生の枝は全くなめらかで毛がない。葉は小形で長いものと短かいものとあり、小枝の左右に並ぶ。葉の形は線形で扁平、先端がわずかに凹形、基部は短かい柄となり、長さは1~2cm位ある。樹脂道は下側の中央に1個だけある、雌雄同株。4月に開花する、雄花は長卵形で小枝の端に単生する。やく室は横に開き黄色花粉を出す。雌花も小枝の端に生じ、長卵形で紫色種鱗には2胚珠がある。球果は長卵形、長さ2~3cmで、初め緑色をしているが、熟すと褐色を帯び、果柄をもち枝の端にさがる。種鱗はほぼ円形で包鱗は倒卵形で小さい。種子は倒卵形で長さ4mm位、翼は皮針形で種子より少し長い。材は種々に用いられ、パルプにも使われる。樹皮からはタンニンを採る。
〔日本名〕 語源は不明。栂は漢名ではない。
-牧野植物図鑑-




   

栂の板



  学  名
 Tsuga sieboldii(栂) / Tsuga diversifolia(米栂)

 Tsuga : ツガ属 、日本名「ツガ」から。
 sieboldii : 日本植物の研究者「シーボルト」さん。
 diversifolia :さまざまな葉をもつ。






  名前由来 (他にも説があります。)
木が曲がるという意味の「とが」が「つが」に変化した。
「つがう木(組み合わせる木)」の意味から、など。






 今回は栂です。春は様々な花に満ち溢れていますが、万葉集に歌われているのを優先させました。建材としては古来より重宝されてきましたが、それ以外でもてはやされる木ではありませんね。
 万葉集に五首収録されています。今回は長歌二首を載せました。僕は花はまだ見たことがありませんが、春に雄花、雌花の小さな花をつけるということで、春の植物に分類されています。また、松の種類ですが、葉っぱが少し平べったいので、もみの木に近いですね。最近は、国内産は少なく、見かけるものは殆どが輸入材です。  (ま)


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