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紅に、染めまく、欲しけども、
   着てにほはばか、人の知るべき       柿本人麻呂


よそのみに 見つつ恋ひなむ くれなゐの
   末摘花の 色に出でずとも        
万葉集 作者未詳


くれなゐの 八塩やしほの衣ころも 朝あさな朝
   馴なれはすれども いやめづらしも   
万葉集 作者未詳


人しれず 思へば苦し 紅くれなゐの末摘花
   すゑつむはなの 色にいでなむ       
古今集


なつかしき 色ともなしに 何にこの
   末摘花を 袖にふれけむ        
源氏物語・末摘花


眉掃きを 俤オモカゲにして 紅粉の花      松尾芭蕉


紅ばなに 最上川 霧 黄となりぬ         林  翔


紅の花 枯れし赤さは もうかれず        加藤知世子



 




10月30日 の誕生花



花言葉は

  「 情 熱 」








 6世紀に高句麗の僧侶が日本に紹介し、推古天皇の時代から、紅色の染料をとるための植物として利用した。6世紀の藤ノ木古墳からベニバナの花粉が検出されている。
 花から得られる紅は女性の口紅にされ、平安王朝人の紅や桜色の衣装を染め、また、古代エジプトのミイラの布の防腐にも使われた。








 紅花には黄色と紅色の二つの染料が含まれています。黄は水溶性で水で容易に取り出せます。紅餅作りの時に生じる黄汁などから庶民の染め物としてよく利用されました。
 紅色は黄色を取り出した後、灰汁でアルカリ液つくりそれで、紅色を抽出して、梅のクエン酸で中和して安定させます。古来より高級な染料として貴重されてきました。紅染めはかつては高貴な人しか着ることを許されないものでした。京都の西陣織のような高級な着物にだけ使用されました。





   べ に ば な   (すえつむはな, くれのあい)    〔きく科〕
  Carthamus tinctorius L.  
 エジプト原産といわれる越年草で、茎は高さ1m内外、白色で上部で分枝し、毛はない。葉は互生し、硬くて深緑色、広皮針形で先はとがり、基部は円形でやや茎を抱き、へりは不整の欠刻またはきょ歯があって、おのおのの先にとげがある。夏に枝の先に鮮黄色の管状花が頭花をつくり、アザミの花に似ている。頭花は径2.5~4cm、長さ2.5cmく゛らい、時がたつとやがては赤色に変る。総包片は外側のものは大きく葉状となり、ふちにとげが多い。そう果は白色で光沢があり長さ約6mm、冠毛は非常に短かい。小花を摘んで日かげで乾かしたものが生薬の紅花で婦人薬とする。また願脂をつくり、赤い色の原料とされていたが、今ではほとんど化学色素に駆逐されてしまったので、以前のように大々的には栽培されなくなったが近年また別の薬用に使われるようになりつつある。また若葉はサラダ菜、種子は油料として利用される。
 〔日本名〕赤い花、または紅(べに)をとる花の意味。末摘花は頭花の末端として花冠を抜きとるからであり、呉の藍は支那から伝来した色素をとる植物の意味。
-牧野植物図鑑-








 今回は紅花です。古代より女性を彩るためになくてはならないものでした。江戸時代は山形藩が一大産地で江戸や京都に出荷しました。
 最近は、染料としては化学染料に押され、食用紅花サラダ油としての需要として一番です。         (ま)

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