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昔の詩・9編 (1976〜77)


  昔の記録を覗いていたら、詩らしきものが出てきました。僕がその頃何をしようとしていたか、蘇ってきます。1976〜7年頃のものです。25、6歳のものです。実はそれ以前の記録は全て捨ててしまったのです。高校生の頃からの記録、ノート十冊分はあったと思います。過去にこだわっていたら前には進めません。
  面白いものが出て来たらまた載せます。当時、夢の記録とかやっていましたから。メモなんで、文章として完結していないものが大部分なんで、僕は分かりますが人が読んで分かるものとなるとそう多くないと思います。                  (マモル 5/4 2008)
 



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 ある日、絶望という言葉を聞いた。
 
  ある日、絶望という言葉を聞いた。
私はうれしさのあまり、泪がとどめなく流れて来た。
何となつかしい言葉であるか。
何と美しい言葉であるか、なんと新鮮であるか。

  久しく忘れていた、美しすぎて、心の隅で泥まみれになっていて、もう死んでしまったかのような、絶望という言葉は、変形し、ゆがんでいた。
  その上に、夢という言葉のアマルガム化粧を着けていた。
だって、そうしなければ、絶望という言葉も変化しつくし、言葉の形を留めなかった。

  ある日、私は絶望という言葉を聞いた。私はうれしさのあまり、とどめなく泪を流した。
                           1976〜7 頃

 

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     朝日
 
暗い夜の後には、朝日が来ると
  君が教えてくれた。
私はまだ朝日を見たことはなかった。
  青い昼と 薄汚れた夕日と
  暗い夜しか知らなかった。
 
 
長い夜の後には、眩しいばかりの朝日が来ると
  君がいつも言っていた。
私は朝日をまだ見たことはなかった。
  君を不安がらせる言葉しか言ってやれなかった。
 
 
暗い夜の後には、美しい朝日がやってくると
  君は信じていた。
そして、私達の家に朝日がやって来た時、
  君は居なかった。
 
けして君が悪いのではない。
  ちょっとばかり夜が長かっただけなのに。
 
                           1976〜7 頃

 
 

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  君は風になれるかい。
 
君は風になれるかい。
その風さ。
ほら、窓を開けてごらん、
戸口をガタガタ鳴らしている風さ。

毎年、この街のとんがり山から、
木枯らし達が地面に茶色のベットを
作ってしまった頃、吹く冷たい風さ。

秋の嵐さ、
春のそよ風さ。

ほら耳をすましてごらん、
風たちのたわごとが聞こえるじゃないか。
 
                           1976〜7 頃

 
 

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ひと、ひと、ひと
 
人、人、人、人、人
ひとがとおる。
 
    みぎ
     の
まえの ぼく のうしろ
     の
    ひだり
  を 人が通る。
 
 
  人人人人人
  人が通る。
 
     右
   前 僕 後
     左
  を 人が通る。
 
人、人、人、人、人
ああ、人人人人人。
 
                           1976〜7 頃

 
 

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僕は風車を見ました。
 
僕は風車を見ました。
逞しい夏雲を背後にひかえ、
カラカラと回る風車を見ました。

風がやってきて云いました。
「オイ、風車よ!お前は俺がいないと動けないのだ。
だから、お前は俺の家来だ。今後、俺に従え。」
といいました。

風車は「いやだ。」といいました。

風は「覚えていろ。」といって去っていきました。

それから、村々に嵐が来ても、台風が来ても、
風車のところは風が吹きませんでした。

村人は、風車を壊し、薪にしてしまいました。
 
                           1976〜7 頃
 

 

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  友人へ
 
悲しみを唄うのはよそう。
雨の多い土地柄だとかいって
切れた三味線のような、しみったれた歌はよしだ。

春先には、モウモウと
砂ぼこりを上げて舞う、
この土地の季節のように、
おおらかに、激しくあろう。

お前が、一度や二度、
女に振られたからといって、
メソメソするのは止めときな。

精神病で入院していた外の友人は
第二の戦いに旅たった。

南の土地の不具者達は
嬉々と己の行動を開始したぞ!

友よ。
僕は悲しみをことさら取り上げ
唄うのは止めた。
 
                           1976〜7 頃

 

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 都会
 
なまり色の
いかにも、私は機械と、
言わんばかりの電車に、
紺色の背広のサラリーマンどもが、
澄まし顔で、吸い込まれて行く。

ターミナル駅の前の
地下30mで、
今日も、故郷を忘れた出稼ぎ者どもが、
疲れも知らず、くそ真面目に
泥の中を這いずり回る。

埋めて地の町工場。
自動車運転手は花嫁のために
500万円の家を買うんだと、
夜八時まで働いた。

プチブルどもが。
今や都会は、プチブルの天下。
 
                   1976〜7 頃

 
 

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 思い出
 
私がまだ幼かった頃である。
私の村に一人の狂者がいた。

彼は時々私の家などにやって来て、
暇な人を相手に、歌を唄ったり、
小話をすることを楽しみとしていた。

ある午後であった。
彼が私の家にやって来た。
家のものは、またやって来たと言うふうで
お茶などだし、そさくさと野良仕事に行ってしまった。

後に残されたのは、僕一人である。
彼は人が聞いているともいないとも気にせず、
唄い出した。
「♪ 船着き場、
  村の入り口は船着き場〜
  ・・・・・・・・ 」
 
                   1976〜7 頃

 村の主の家の先代の当主だったと思う。不思議な人、楽しい人として記憶の片隅に残っています。精神科に入る前の時期だったのではないでしょうか。



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 無題
 
輝ける陽は西山に落ち
青ざめたる月がますます光の矢を地上に放ちはじめ
白い聖者達の目覚めの時を向かえた。
疲れを知らぬ人々がどん欲ばりを終え、
淫しつな欲望へと我を忘れんとする時、
地上を埋めつくせしアスファルトは割れ、
一条の水とともに這い出したるものは
古代の神々や悪神達。
うたげの準備である。
 
                   1976〜7 頃

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