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 水みな伝ふ、磯いその浦うらみの、岩つつじ、もく咲く道を、またも見むかも
日並皇子宮舎人ひなしみのみこのみやのとねり

 意味: 水が流れている岩に咲いているつつじが見えるこの道をまた見ることができるのだろうか。日並皇子ひなしみのみこの死を悲しんで舎人とねりたちが作った歌の一つです




 たくひれの、鷺坂山さぎさかやまの、白つつじ、われににほはね、妹いもに示さむ   作者:
 意味: 鷺坂山の白つつじよ、私の衣を白くしてくれたらそれを私のいとしい人に見せましょう。






 物思はず、道行く行くも、青山を、振り放け見れば、つつじ花、にほえ娘子をとめ、桜花、栄え娘子をとめ、汝れをぞも、我れに寄すといふ、我れをぞも、汝れに寄すといふ、汝はいかに思ふや、思へこそ、年の八年やとせを、切り髪の、よち子を過ぎ、橘の、ほつ枝をすぐり、この川の、下にも長く、汝が心待て
柿本人麻呂歌集より

 意味: 物思いせずに道を歩いて、草木の繁った山を仰いで見ると、そこに咲いているツツジのようにきれいな君、桜のように美しい盛りの君。(花たちは)君が私に心を寄せているって言っているようです。私も君に心を寄せているっていっているようです。。。君はどう思う? 思えば切り髪(かみ)だった小さな頃から橘(たちばな)のほつ枝(え)に届くように大きくなるまで8年も、この川のように心に長く君の心が私の方に寄せるのを待っているんです。
 「ほつ枝(え)」は木の上の方の枝のことをいいます。








やまつつじ                 〔つつじ科〕
Rhododendron Kaempferi Planch.

 各地の山野に自生する半落葉低木で、高さは約1~3mとなり、枝は分枝多く横に広がる。葉は互生し、枝の先に集ってつき、狭い倒卵形、または倒皮針形で先は鋭形、枝とともに毛がある。初夏、枝の先に有柄の赤色の花を少数散形状に開く。がくは5裂して小形、卵形でふちに毛がある。花冠は漏斗形または漏斗状鐘形で5裂し、上面に濃紅色のはん点がある。雄しべは5本、雌しべは1本。さく果には毛がある。
 変化が多く、花が紫色のものをムラサキヤマツツジ(f. mikawanum)、がく片が皮針形で細長いものをサンヨウツツジ(f. purpureum)、がく片が花弁状になったものをヤエザキヤマツツジ(f. Komatsui)、雄しべが花弁状になったものをタチセンエ(f. plenum)、花筒の綿長いヒメヤマツツジ(f. tubiflorum)、北海道にあり葉が大きく、がく片も幅広いものをエゾヤマツツジ(f. latisepalum)、伊豆大島のものは芽のりん片が大きくオオシマツツジ(f. macrogemma)、四季咲ヤマツツジ(f. semperflorens)などの品種がある。
-牧野植物図鑑-










小さい頃、春になると田舎の裏山に登りつつじの花の蜜をすすったことを思い出す。また、大学は入りたての頃、駒沢公園の強い日差しとつつじの咲き乱れる風景と、女の子と散歩したりした、甘酸っぱい記憶が蘇ってきてなかなか良い花である。実際の僕の青春はこの初夏の日差しの眩しさと此花などの眩しさに対応できずおろおろしていた記憶ばかりなのだが、つつじは青春の記憶と重なり年を取るととも眩しさを増しいとおしい花である。
 ツツジもサツキも石南花シャクナゲも同じ植物と言っていい程の近い仲間、サツキは初夏に咲くつつじ、石南花は落葉しないつつじのことであることが今回調べてわかった。また、車道などの最悪な環境にも植えられているが、元々は岩山などに根付く、強くたくましい植物である。(まもる)

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