prev top 星野DM







山葡萄 あはれみつゝも 伐り放ち
高浜虚子
 
山葡萄故山の雲のかぎりなし
作者不明



       



やまぶどう      〔ぶどう料〕
  Vitis Coignetiae Pulliat

 四国から北のブナ帯を中心にした山中に生ずる落葉のつる植物で、茎は長く生長して葉の反対側に生ずる巻ひげで、他の木の上にはい上リ、年数を経た植物ではその幹の直径が数cmとなり、濃い茶色である。枝は節くれ立ち多少じぐざく状に曲り、また若い枝には茶色の毛がある。葉には葉柄があり互生し、大形で長さ15~30cm、3または5のとがった角ばった円形、基部は心臓形で、へりには低いがとがったきょ歯がある。葉の裏面には茶褐色の綿毛が密にはえている。秋にはよく紅葉する。花は小さく黄緑で、葉と対生する柄のある円すい花序に集って着き、花序の下方の柄の上にしばしば1本の巻ひげがある。
 がくは輪形。5個の花弁は先端では互いにくっついてるが下部では離れ、花床から離れて落ちるのはこの属の特徴である。雄しべは5本、花糸の間に蜜腺がある。液果は房になってたれ下り、エンドウ豆位の大さの球形で熟すると黒くなり、食べられる。
〔日本名〕山葡萄の意味。
〔漢名〕紫葛を使うは誤り。

-牧野植物図鑑-




 子供の頃、山で大きな栗やパカッと口を開けたアケビや黒々と大粒のぶどうを見つけるのは男の子の勲章だった。食べる前に友達に見せびらかせてから、ぱくっと口に入れるれる優越感はなんとも言えないものだった。
 山葡萄の蔓を見つけるのは簡単だが、いかにせん黒い大粒の実はよく陽のあたる枝先にしかない。大きな枝に上り手繰り寄せることができればいいのだが、蔓も宿主の木の枝にしっかりしがみついていて、細い枝まで体を移動しなければ取れない。手足にたくさんの擦り傷作っての収穫物は、お店で買ったどんな葡萄よりもおいしい味がした。       (まもる)























prev top 星野DM