大地
絵は踊りだ
足で大地を踏むように
大地は絵の母だ
ホルムも色も足より人り
全身を満たし キャンバスに投影される
大地は光る
光りは空よりやってくるとは
それはウソだ
大地こそ光る源だ
そして 絵は踊りだ
1981頃
ピンクの大地
変容する大地に対する記述
光は 空より降ってくるとばかり思っていた
光は 赤や黄色や緑やそして透明であるとばかり思っていた
しかし それは まやかしだ
光は 空からやって来るのではない
赤や黄色や緑は光によって伝えられるのではない
ある日 私はそっと地面の上に立った
すると 突然 そしてゆっくりと 地面がほんのり光はじめた
熱気を持ち 赤味を帯び 私の足に伝わり
私の体を満たしはしめた
森が前方にあった
1981頃
夢
天井のやけに低い建物である。
木造である。
僕が入って行くと、中年の男が二人が箱を囲んで話している。
その容貌はさだかでないが、そのうちの一人は痩せ顔の上、髭が下顎を真っ黒に隠している。
何か真剣に話している。
隣の部屋と言っても、かなりの時間が必要である。そこまで行くのにには。
僕らはそこを穴と呼んでいた。
大人の背丈より少し高いぐらいの入り口を入ると、天井は低いのだが部屋はかなり広く、半分は板の間であり半分は階段になっていて、円形の段が地下の方に下っていて、天井もそれに従い下っている。
丁度それが洞窟か何かの格好なので僕らは穴と呼んでいた。
映画をやっている。四人の男が映写機を持ち出して床のところから穴の奥にスクリーンを作っている。
五十年代頃のアメリカの映画である。やけにアメリカ的な画面が写し出されている。
円形の段にはまばらに、二人、三人、男女がスクリーンをのぞき込んでいる。
僕は床と段との境のところまで進み、スクリーンをのぞき込んだ。・・・・座っていた。・・・・
僕の数段下にいた女が僕を見ている。
泣いているのか、何か思いつめているのか、僕のほうを見たかと思うと、突然僕のそばにやって来て、口を吸い始めた。
何か言っている。
とても興奮した様子で「人でなし、抱いて」と言って僕に唇を押しつけてきた。
熱気と心臓の激しい鼓動が、息づかいが伝わってきた。
思わず僕は、体を退ぞけ、平手打ちを食らわした。
女は泣いている、ヒーヒーと声を立てている。
僕は怒ってその場を立ち去った。
1983頃か
大変だ
大変だ
天井が落ちてくる。
お前はその棒で支えろ
お前は体が大きいから、手で支えろ。
空を見上げると、空に輝いていた星々は、
豆電球のように光を失いつつあった。
おい、お前手伝え。
お前だ、そこの女、手伝え。
お前もだ、髪の毛を染めて男だか女だか分んない奴、
ここに来て手伝え。
大変だ、大変だ。
そこの自称天文学者、
お前も手伝え。
大変だ、
そこの丸太棒。
そそ、それを持って立て、
そうだ。
1983と思われる
一粒の泪と百粒の雨
六月のの雨は恵み
熱狂の季節への前奏
流産した赤子たちに落とされた泪の集積
死者たちの腐敗を進める素
豊穣への予感
堕天使たちの休憩の時
花が華たるための水
1984 6 マモル
らくだ
猫にすがって よれよれと
あの女こにすがって よれよれと
あの女こになじられ よれよれと
錆びたナイフは錆ついて
かっこつけるな 大間違い。
猫にすがって よれよれと
骨々 カタコト音がして
肌は ガサガサ傷だらけ
猫にすがって よれよれと
錆びたナイフは錆ついて
元は何やら 分からない。
猫にすがって よれよれと
これでいいじゃない いいじゃない
かっこつけるな 大間違い。
1985 頃か
私は、私の小さな舞おどりを
私は、私の小さな舞おどりを舞おどらなければならない。
ゴミの堆積した、この都会の大地にも
雑草は花を咲かせ、虫達は蠢いている。
ならば大地は、今だに
ならば大地は、今でも
春を約束してくれる。
舞おどらねば、私の小さなキャンパスに
私の「生」の証を塗り込めなければ
1986.1
二月
陽は春の光りを白く放つのに
季節はまだ兜蟹のように
硬い鎧の中にある
私のなかには まだ幽かに
その白い光とは反対の
死の季節の記億が蘇る
幼い日の土曜日の午後 姉が死んだ
そして 祖母も 父も
この季節に死んだ
ビジョビジョの雪道は
弱った病人たちを
三途の河原へと連れ去る。
二月
まだ 硬い鎧の中に身をすくめなげれば
北風が心まで凍らす季筋
92/2 守
春よ来い 早く来い 春よ来い 早く来い
緑のジュウタンで 悲しみでいっぱいになった
私の体をつつんでおくれ 私の心を
花々で私を飾り立てておくれ あなたの温かい胸で
抱きしめておくれ
春
借りた山の家の畑の
嬉しさに
大根 小松菜 ナス カブと
手当たりしだいの種蒔は
小雨で薄着の馬鹿はしゃぎ
しからば 風邪被き
僕の頭は ポウーと春霞
山には薄桃 桜花
ボウーと桃めて
クシャミは3回
詮なく 今日は こたつにまん丸 小亀さん
庭から
ユンチワァ!
黄色く可変い唇の
水仙君が
元気なごあいさつ
さりとて
僕ばボウーと春霞
92/4/3 Mamolu
闘い
時々思う
何時も思う
ふと恩う
闘わねばと
でも、また思う
何故闘うのかと
それはそう言う宿命だから
とはいえるが
しかし でも それは
きっと
それは素敵なことだから
きっと
それは夢を言うことだから
と
思ってもいいよね
92/4/20 Mamoru
芽吹きの季節
春が来た、春が来た。
野にも山にも町にも春が来た。
今年も 約束を守って 芽吹き 花咲かせてくれた。
なんと嬉しく、何と有り難いことか。
冬枯れの山々は死にたえて
もう木々は私に
ほほえみかけることはない
と思い込んでいた。
雨が降り、また雨が降り
今年も芽吹き 春が来た。
なんと嬉しく、有り難いことか。