思い出すまま - No152 /  prev top next


 「ムスヒ」の神様について
           ─古代史は面白い─
 古事記には、この世に始まりに「アマノナカヌシ」に続き二柱のムスヒの神様が生まれたとあります。「タカムスヒ」「カミムスヒ」です。ムスヒは漢字で御産巣日(古事記)皇産霊尊(日本書紀)と書かれますが、漢字で表すと漢字は意味言葉ですので、本来の神様の性格が変わってしまうというのが、日本の神様です。
 そして、日本の神様が体系化されたのは古事記の頃で、古事記や日本書紀は多くの神様を体系化する為に、作られた編纂されたのです。中国の道教の影響が強く、その元に体系化されるのに選ばれた神様達です。
 
 しかし、この「ムスヒ」が日本の神々の本質をなすことは確かです。さらにこの言葉を分解すると「ムス(産)+ヒ(日)」です。「ムス」はマタ(魂、霊)をモノ(物)と結びつけることのより命が生まれる。ということです。そして「ヒ」は太陽です。太陽の下で植物や動物だけではなくあらゆるものが、魂を持ちスクスク育つという意味なんです。
 本居宣長、折口信夫も日本神道の本質が「ムスヒ」にあり、万物創造が「ムスヒ」によってなされるといっています。折口は戦後政治化した神道を痛烈に批判し、万物創造のムスヒは「普遍宗教としての神道」とまで言及しています。恐らく古事記や書記を編纂した古代の人々が、もっと身近な概念であった「ムスヒ」を道教や仏教の普遍性に飲み込まれないために、万物創造まで引き上げたと言うことでしょう。
 また、「タカムスヒ」の「タカ」は(高)で高木のことです。高木神という古い神様です。元々は森の神様です。古代日本は鬱蒼とした森に覆われていて、その高い木を守り神としていたからです。縄文時代からの信仰を受け継いでいるのだろうと思われます。「タカムスヒ」は性別はないとされていますが、どちらかというと男、「カミムスヒ」は女です。
一番の大切な意味は「ムス」で、「タカ」も「ヒ」も敬称の意味合いが強いと思われます。(「タカ」も「ムス」も敬称で「ヒ」がこの神様の本質、太陽神であるという研究者もいます。)
 
 高天原神話で、初めは「タカムスヒ」を最高神にしよう為政者は考えていたのですが、庶民は女神の方を望んだので、最終的に、「アマテラス」という女神、太陽神に落ち着き、「タカムスヒ」は「アマテラス」の後見人の役に引き下がった。と僕は思います。
  また、邪馬台国がヤマト政権の先祖なら、太陽神の巫女の「ヒミコ」が王家の先祖として神格化して「アマテラス」になったということで、歴史的事実と符合します。
 イエスは男ですがイエスを産んだマリア信仰は根強い。観音様は男ですが、作られる観音像は女性的です。日本の古代は殊の外、母性信仰が強かった証です。
 余談ですが、「ムスヒ」は「ムスビ(結び)」で、結ぶことにより新たな命を産むといういみなのです。「おむすび」はお米の命を結んで新たなものを与えてくれる食べ物という意味で、「お握り」とは全く意味が違うのです。
 
 
 皇国史観と高天原神話
 安倍政権になり政府の復古的風潮に右翼が活気つき、過激な人種差別行動が国連の人権委員会から指摘されるまでに至っている。でもさすがに戦前の皇国史観まで持ち出す右翼はいないようですが。
 
 さてこの皇国史観、伊勢神宮と天皇家の正当性を持ち出すと共に、他の宗教の排斥、考古学的に分析の曲解と、すこぶる政治的宗教観がなぜ成立出来たのかと考えた時、古代の飛鳥、奈良時代の律令制度成立当時の宗教観までたち戻る必要があります。古事記や日本書紀に描かれた高天原神話は、その成立当初からすこぶる政治的意図の強い宗教だったのです。だから、明治に至りそのまま特別な修正をかわえずに転用できたということです。
 元々古代の日本の宗教は体系的ものは持ち合わせていませんでした。中国より道教や儒教、仏教といった体系的な宗教の侵入は、当時の為政者にとり、すこぶる脅威として映りました。
 
 外来のこれらのものは、
 1 文字で理念や哲学を記述していること。
 2 多民族への布教を考慮し、普遍化、体系化されていること。
 
 日本な宗教はこの世とあの世(山の世界、海の常世や根の国)と平面的、並列的世界観でした。「あの世から魂がやって来て、死ねばあの世に帰って行く。」という世界観で、この世とあの世に上下の隔たりがありませんでした。しかし、大陸から来たものは、垂直的世界観すなわち天界と地上と地下で、天界が地上と地下の上位に立つという構造で、そこに優劣が厳格に存在していたのです。当時の人々は、大陸からやって来た価値観に呑み込まれる危機感があったのだと思います。
 歴史的な事実に則すと、四世紀に朝鮮半島で高句麗との戦争に大敗を機に、垂直的に世界観の宗教への模索が始まったものと思われます。そして時間をかけ徐々に高天原神話が形作られたのだろうと思います。古事記や日本書紀は四世紀に始まった宗教改革の最終段階だったのではないでしょうか。
 
 1 大陸の宗教に対抗できる体系を作ること、
 2 天上の最高神に女神を据えること、
 3 豪族の神々、特に国民的人気のあった出雲神々を高天原の神々の下に置くこと。
 4 王権の正当性を保証すること、
などを満たし、7世紀頃高天原神話は完成したのです。
 
 












 香港のデモ
 九月下旬から香港の学生達が町の中心部に座り込み、行政長官の辞任と普通選挙を要求している。
ニュースをインターネットで検索していると、何やら熱いものが込み上げてくる。
 僕らの青春時代と今の中国の若者が直面している状況は似ている。高度成長が一息つき「豊かさとは何か」と若者は敏感に感じとっての行動です。
 なかなか良く頑張っています。遠くからだか、彼らの行動の推移を注目して行きたいものです。
 
 気になる国、中国
 国慶節に至り、自由選挙を要求して、香港の学生達の座り込みが続いている。今後の中国を見るのに大きなポイントの一つになります。
 政府の腐敗防止のキャンペーンは一定の効果を上げているようですが、それを裁く法律はありません、共産党の倫理規定で裁いているのです。法律が追いついていないのが現状です。明確な基準があるわけではなく権力闘争の色合いを払拭出来きません。大切なのは情報の自由化と政治の民主化ですが、経済の自由化のみで、こちらはこれからも全く手をつける様子はありません。
 旅行ブームが富裕層から広がっていて、中国国内と他国との比較が進むものと思われます。丁度1970年代の日本に似ているかもしれない。ヨーロッパで、中国人は集団で行動し、他の地ルールを守らない。という、かっての農協のツアーが顰蹙(ひんしゅく)をかったのと同じようなことが起こっています。「旅は恥はかき捨て」なのです。外国を知らないと言うことと、公共意識の低さです。こちらは民主化大きな関係があると思います。政治を一部のエリート任せている限り、治りません。
 
 香港のデモはいずれ鎮圧されるでしょう。天安門を知らない若い世代が、中央政府に異議を唱えることは、大きな経験になります。それはいくら政府が情報統制しようと、本土の若者達に伝わります。中国本土で条件が整った時、これらの経験は大きな民主化のうねりとなると僕は信じます。そのきっかけとして今僕が注目しているのは、経済の行方です。成長が更に鈍り、国内の不満が抑えきれなくなった時です。
 資本主義は優しい経済ではありません。日本より十倍の人口を抱え、同等の経済力しかない中国は、十分の一の力しか民衆の力を出し切れていない、未成熟な経済であるし、社会です。これから更に経済発達を望ぞむなら、民主化は避けて通れません。「社会は自分たちが作ると言う」意識と責任なしには成立しない経済です。
 
 現在土地バブルが崩壊し始め、金融バブルの崩壊へと進みつつあるのが現状です。規模が大きいので、表面化に時間がかかっていると思われます。中国共産党が民主化のプロセスを準備せず、西欧と中国は違うという中華主義を頑なに守ろうとすれば、流血など大きな混乱を引き起こすでしょう。
 どんな事になろうと、東アジアは中国なしには考えられません。共産党の幻想の時代はとっくに終わっています。民主化を拒む姿は醜態そのものです。
 
 そもそも、共産主義は私有財産を認めない代わりに、食料や住居や教育、福祉を保証するというシステムである。自由を制限する代わりに、生活保証は提供する。という大前提の上に成立している。
ここ10年続く土地バブルは、公共工事を名目に、農民から安い金で土地を取り上げ、高層住宅を作り、富裕層に売る事で成り立っているのです。膨大な利益は農民に還元されず、地方政府、開発業者が独り占めしている。共産党の理念など全く忘れられているのです。
 鄧小平が市場経済に路線変更した時点で、政治も自由化すべきだったのですが、多くの国で経済成長と政治の民主化は同時に進行しません。開発独裁という言葉があるように、経済が先行し政治の民主化がその後に起こります。その経済も自由化民主化しないと伸びない時期に入ったのです。中国は政治の季節に入ったと言うことだろうと思います。
 
 
 原発再稼働と再生可能エネルギー封じ込め。陰湿な妨害が始まった。
 先月の九州電力の「電圧不安定の危険による、ソーラー発電買取義務の一時停止」宣言を発表に伴い、他の電力会社も追従を打ち出した。買取義務化以降、大規模ソーラー発電建設計画が各地で予定され、過熱化していることも確かであるが、それに見合うインフラ整備(送電設備増設、蓄電装置、電力安定システムの構築)が追いつかない為である。
 それは当然予想されたことであり、この2年間何も進展していないのは、明らかな不作為、意図的悪意さえ感じさせる。原発再稼働を急ぐ現政権と原発推進の官民による共同歩調と見ることができる。ここで再生エネルギー増加にクサビを打ち、原発の再稼働を早めるためである。
 インフラ整備が遅れているのは、現政権が再生可能エネルギーの長期計画を提出していないからであり、悪意のある不作為である。盛り上がった国民の自然エネルギー熱を冷まそうする行動です。
 
 
 百姓庶民の歴史が見えてこないと面白くない。
 百姓は古代、姓(かばね)を作った時、少数の貴族に対してたくさんの姓を持つ庶民という意味で、必ずしも農民ではないのです。それが謙虚に現れたのは江戸時代です。江戸時代、百姓は農閑期を利用して様々な仕事をしていました。農業収入よりそちらの方が多かったり、農業をしない百姓も多かったりのです。
 現在百年以上の伝統を持つ老舗企業は、世界で一番日本が多いのは、いかに江戸時代が工業や商業の貨幣経済が発達していたかを表しています。例えば繊維産業、シルク、木綿、麻製品は、百姓の本業としてあったので、農業の片手間にやっていた産業ではえりません。明治維新はこれらの産業の資金力によってなされたのです。有力商人が奇兵隊に資金を出し、新政府の財政を支え、産業革命が成功するまで、貴重な外貨を稼ぎ出したのです。
 江戸時代、農村は貧しい農村ではなかったのです。日頃は質素倹約を建前としていましたが、いざお祭や祝い事となると、派手に着飾ったのが、江戸時代の農村です。浄瑠璃、歌舞伎を自分達で演じ、俳句、川柳と文化的遊んでいたのが、江戸時代です。
 奉行所や藩は様々な法律を出しましたが、多くは百姓の慣習法を追認するものですし、村役人を中心とした自治が成立していたのです。認められない法令は一揆を起こし交渉していますし、法律をすり抜ける方法を見つけ出していた。奉行所の方もよほどのことがない限りそれを黙認していのです。
 
 民主的でない政権がこの世なかったというのが僕の意見です。庶民の支持なしにはどんな法律も定着しなかった。ということだろうと思います。例えばムスヒの所でも申しましたが、始め大和政権は高句麗の神に習い「タカムスヒ」という男神を最高神にしようとしました。しかし、庶民は日の神であり女神の「アマテラス」でなければ納得しなかったのです。
 文献資料が少ないので古代の庶民の生活はわからないことが多いのですが、中世以降は色々な事が言えます。関東は飛鳥奈良時代、最後の朝鮮半島からの移住者により開発が進み、平安時代には、中央に対して反乱を起こすことになります。将門の乱です。将門軍隊は農民兵です。農繁期の虚を突かれので負けたのですがそれは、鎌倉幕府の成立へとこぎつけることになるのです。
 中世は、百姓が大きな政治勢力として新たな動き方をします。仏教が庶民の中に根付き、新宗教勢力として台頭してきた時代です。それらに触圧され熊野信仰や、伊勢神社も貴族だけではなく庶民を取り込み、独自の信仰組織を全国展開します。南北朝の南朝を支えたのは、熊野信仰の全国組織です。
 室町時代にはいると、郷村自治の拡大運動が起こります。農民が武装し一揆を起こすのです。時に戦国大名と敵対し、時に戦国大名を支えるそんざいとなるのです。百姓達を上手く取り込むことに成功したのが、戦国大名として生き残ったと言えます。
 
 公家や武士の動向だけが歴史ではありません。彼等にそうさせたのは、常に当時の庶民、百姓の意向がそうさせたのです。庶民が見えてこないと、歴史のダイナミックさは見えないし面白くない。
 
 
 安倍政権は早く潰さないといけない。
 女性閣僚を多く起用は僕も賛成なのですが、タカ派の女ばかりでは起用しない方が良い。2人やめたが、この辺の保守性がこの政権の一番の問題です。春の消費税の値上げ以降、経済政策の保守性が表面化し始めたので思ったように景気が良くならない。金融緩和とアメリカの景気に支えられたというのが現状でしょう。アベノミクス3本目の矢が機能していないと言うことです。更に思い切った行政改革必要なのですが、利権団体の抵抗にあいそれが出来ないというのが、この政権の持つ保守性の限界だろうと思います。
 この二年間、再生可能エネルギー買い取り義務制度があるなら、電力不安定は分かりきったことです。その対策を全くしてこなかったのは、悪意さえ感じられます。
 少々混乱はするかも知れないが、構造改革するしかこの国の再生はないんじゃないかと思います。改革を拒否するから安全保障や情報面の保守的政策となるのです。今までの利権構造を守ろうとするからです。
 
 10/31日銀が追加の金融緩和を発表して株価が跳ね上がった。アベノミクス失敗ですね。3本目の矢が上手く機能していないから、金融政策に頼らざるを得ないと言うことです。金融政策は一種の麻薬、マネーゲームに陥る危険のある、あくまで補助的な政策です。IMFが「もっと構造改革が必要」と指摘しているように、それが弱い現状では、来年この反動が出てきます。景気は悪くなります。安倍政権の先は見えてきた。
 
 




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