思い出すまま - No130 /  prev top next

 ラニーニャ・神の娘
 寒い冬です。暖冬気味の冬が当たり前になってきたなかで、久しぶりに冬らしい冬です。冬は少し引き締まる感じの寒さがほしい。今一月下旬時点でこう思うのだが、この先どうなるか。寒ければ春の到来は有り難く感じる。
 こうなったのは、昨年の夏以来ラニーニャ現象が続いているからです。赤道上の海水温が一、二度東が低く西が高い現象ですが、しかも過去最大です。そのお陰で、オーストラリア、ブラジルは大洪水が起こりました。そして東アジアは寒波襲来です。東南アジアで暖められた上昇気流が北中国上空で下降気流となり、シベリア寒気団を強化しているのです。昨年の夏はこの下降気流が太平洋高気圧を強化して、猛暑が続いた。これも温暖化の影響の一つです。寒と暖、乾燥と洪水の差が激しくなっているのです。
 寒ければ来る春は殊更嬉しいもの。お酒にしてもお味噌にしても、寒仕込みといつて寒さが味を引き締めます。人間も同じです。心を引き締めるにはうってこいの寒さです。
 
 今年の初打ちは
 今年の蕎麦の初打ちは小正月の十五日、栗橋のやまちゃん、洋子の所のカレーパーティーでした。洋子の実家に二人が戻ってから、遊びに行きたいなと思っていた。人が集まるというので、一度蕎麦を打ちに行くこととなった。
 カレーのルーがいっぱい残っていたので、カレー蕎麦を作ってみたがこれがなかなかいい。今度は機会を作ってカレールーからを作ってみよう。
 
 今年は去年から始めた「うどん」をもう少しおいしく、「ムトウうどん」いえるもまで仕上げたい。東京にチェーン展開している讃岐うどんの店には負けられません。趣味でやっているこちらの方が手間暇かけている分、美味しくいないといけない。うどんはやはり一番はうどん粉ですね、いいうどんこを入手できるかが鍵です。
 今年の六、七月の小麦粉の収穫時になったら、新うどん粉を多摩地区の農協を回してさがしてみよう。うどんは、小麦粉の風味を味わう食品です。小麦粉の甘み、風味、食感を味わう一番シンプルな調理法です。卵と醤油だけでおいしく食べれなければ、いいうどんを打ったとはいえません。そこが一番の基本。そして次にだし汁、いいトッピングです。カレーうどんももちろんやろうと思っています。
 
 季節
 暦が太陽暦になって150年、でも季節の祝いは二四節季ですべきです。何千年と時間をかけ育んできた季節感を高々150年程度でないがしろにして欲しくない。と言うのが率直な僕の思いです。この季節感を支えていたものは、自然とともにあった社会です。季節に関係なくどんな野菜でもスパーに並んでいる今日、季節感が失われてゆくのは、仕方ないのかもしれないが、この風土に住む者にとって、この季節感とともに暮らすことが一番合理的なのです。そこまでは簡単には変らないからです。特に体調の管理とか健康面では、旧暦、二十四節季に合わせ管理すべきです。
 「ひな祭り」「端午の節句」「七夕」とかは、太陽暦の月日にするとその意味が変わってしまいます。「正月」もそうです。正月は元々春なんです。今の一月一日は冬の真っ最中です。旧暦の正月、今の二月にすれば、寒が明け、日差しはずいぶんと明るくなり、梅の花が咲き、春の始まりを祝うことができます。
 「ひな祭り」は桃の節句です。四月半ばなら桃の花盛り、かわいい女の子の祭りにふさわしい。「端午の節句」は梅雨の初めに食中毒などの病気除けの祭りです。鯉のぼりは水の季節にちなんだものです。五月の空じゃなく梅雨空に泳ぐべきなのです。「七夕」は梅雨の真っ最中星も見え難い時のものではありません、夏空の安定した八月のものです。
 
 歴史の闇
 「田辺三菱製薬の子会社が検査せず製薬を出荷」と言う記事が一月下旬に報じられた。根深い話です。一世紀近くの「企業の業」言うべき企業体質の問題です。薬害エイズを引き起こした「ミドリ十字」を吸収した会社で、安全とか言った者を軽視する体質がそのまま残っていたのです。
 水俣病や薬害事件を引き起こした、企業だけではなく日本の厚生行政そのものが、戦前の毒ガス兵器や細菌兵器を作った日本陸軍の技官達が十分に戦争責任を追及されず、製薬会社や厚生省の専門家として担当したからです。中国大陸で中国人のスパイや捕虜を使って多くの人体実験をしたのですが、その実験資料をGHQに提供することによって彼らは戦犯を免れたのです。人権問題である人体実験は、アメリカの生物、毒ガス兵器製造に大きく貢献したのです。
 洗っても洗っても負の体質が生き残っているのです。今回は被害は出なかったが。
 
 チュニジア、エジプトの政変、そしてリビア 、、、
 チュニジアの独裁政権が民衆の力によって倒れ、二月にはエジプトのムバラク政権が倒れた。今、リビアが内戦状態です。
 昨年十二月にチュニジアで始まった、「ジャスミン革命」の波は、北アフリカ中東のイスラム諸国に瞬く間に広まっています。その速さは、インターネットと言う情報のメデア革命の力が大きく関与しています。それと同時にイスラム社会が質的に変化してきていると言うことでしょう。この民主化は1980年代の東欧諸国の政変と同じ規模の、世界の歴史の必然です。
 これらのイスラム社会が王政や独裁を許してきたのは大きく二つの理由があります。ヨーロッパやオスマン帝国の植民地から解放されて日が浅く、国家と言うより部族の力が強く国民国家ではなかったと言うことが一つ。もう一つはヨーロッパやアメリカが、石油の安定供給と引き替えに、民主化の弾圧を容認してきた言うことです。更にイスラエル問題も絡んだ、こわゆる二枚舌外交です。これらの動きは、アメリカ、ヨーロッパの中東戦略の修正をも要求しているのです。
 
 今までの革命運動や民族主義の運動と異質なのは、たいした政策やイデオロギーがなく、自然発生的に起こったと言うことです。感心するのはそれにもかかわらず、略奪行為などなく、デモは良くコントロールされている。ということです。これからも口火を切ったネット世代は、良質の知的な人々です。それと対比的に政権側の警察やリビアの傭兵部隊が無差別の発砲を繰り返して、急速に他の国民の支持を失った。と言うことです。
 彼らネット世代の若者は仕事や自由を求めているのです。もちろんまだ彼らに政権を担当する能力はありません。既成の原理主義の政党や軍が今後の政権を担当することになるのだと思います。ただ新しい、自由を求める世代が成長していることは確かです。
 
 イスラム原理主義と過激派
 中東のイスラム国家は国が成立してまだ一世紀に満たない若い国家です。ヨーロッバの植民地やオスマン帝国から独立してまず王制国家ができ、第二次大戦後革命により次は独裁政権となった。そして今回その民主化の流れが生まれた。ヨーロッパや日本が歩んだ道を急速に進んでいるのです。
 その中で彼らは自分たちのアイデンティテーを求めるのは当然のことです。マホメットの理想は、弱者救済と平等社会です。そのイスラム教の教えに戻ることと、過激な政治闘争に行うこととは全く別なのだと思います。自爆テロやアルカイダなどの過激派が台頭するのは、王政や独裁といった発言の機会が限られているからです。そして、それを追認している国際政治の責任です。
 恐らく民主化して国内矛盾を解決してゆく以外に、過激派の台頭を抑えることはできないのだと思います。アメリカはじめヨーロッパ諸国の中東政策、イスラエルに偏り過ぎた政策は是正されるべきなのだと思います。いずれにしても時間のかかる問題です。
 
 次は中国?
 僕としてはこの波が中国まで及ぶのかということですが、分からない。この波はリビアやイランまででも起こり、中東、北アフリカのアラブ全域に及んでいる。先は分からない。ソ連の崩壊のような歴史的事件になりつつあることは確かである。中国の場合はインターネットの管理が進んでいて、今のところは民主化の契機になる様子はないが、嘗ての天安門事件の頃に比べ、鬱積した矛盾は欠く出しているので、始まれば一気に拡大する可能性がある。中国政府の対応次第です。
 
 ネット革命
 デモの参加者がみんなネットを使える人々というとそれは疑問です。ツイッターやフェイスブックが大きい役割を果たしたことは確かです。情報がグローバルにそれも瞬時に行き交うと言うことは、嘗ての革命とは違った大きな要素です。エジプト政府がネットを遮断した時期も情報が途絶えることなくでも参加者達に流れたのは、一度電話などで国外に持ち出され、国外の支援者が正確な情報をインターネットで集めまた国内に返す。という情報のシステムがあったからです。
 国外のマスコミはインターネットで得た情報を衛星放送で流し、それをエジプトの国民が見る。アルは国外の知人からの電話で知る。そして、一般のでも参加者には口コミで情報が広まる。と言った度合いです。
 また、世界中のハッカー、民主化支援者がエジプト政府のコンピューターにサイバー攻撃をする。政府の通信網を混乱させると言った援護射撃も大きな力となっています。
 大切なことは、二十代三十代の若者、彼らはデモの参加者のごく一部ですが、インターネットを自由に操り、自由や民主主義を理解し、デモの口火を切り、反政府勢力を巻き込み、一般大衆をデモに参加させ、正確な情報を流し続けた。と言うことです。従来の民族主義的な運動とは一線を画しても良いのだと思います。
 
 菅政権の危機
 野党のみならず、マスコミも国民も菅政権に冷たい。消費税に言及した菅さんを僕は大変高く評価するのですが。昨年ギリシャの財政破綻でヨーロッパはじめ世界中が大混乱を起こした。日本が財政破綻したらギリシャの比ではありません。日本はもちろん世界が恐慌に陥いる危険さえあります。支持率が低下する危険を冒してそれを表明した菅さんの英断だと僕は思います。
 どこも消費税上げずに巨大な財政赤字を解消するプランを提出せずに批判するのは無責任だと思います。これが僕のこの政権を取り巻く状況に関する感想です。民主党政権の善し悪しを判断するのには今は早すぎる。と思います。
 日本はやっと政権交代によって路線変更をしたばかりです。変わってしまった社会構造。それに対応した政策。マニュヘストが欠陥があって当たり前です。野党時代の正確な情報なしに作成されたものです。大きな方向性さえ正しければ良いのだと思います。子ども手当が多少減っても仕方がない。大切なのは「国が子育てを支援してゆく」と言う方向性です。高度福祉国家に対応した経済、産業を興してゆくといった方向性です。老人社会を否定的にとらえるのではなく、それらののノウハウをもって世界をリードしてゆくという姿勢です。だから僕は四年間は民主党政権を支持します。その結果でその後の支持不支持判断します。
 
 問題は日本内向きになっていると言うことです。世界が見えていないと言うことです。TPPにおける農業の問題は、経済はますますグローバル化は避けれませんので、その中で考えるべきです。すべてのことは世界戦略という視点で考えたら、農業だって、高齢化社会だって見えてきません。介護ビジネスや、介護機器や、介護制度も20億円規模の輸出産業、成長産業なんです。日本で進んでいる高齢化は、次に韓国中国と進むのです。日本で実験成功したことは良質の質の制度として売れるのです。日本人の自分でだめだだめだと思っているだけ。と僕は思います。
 
 もちろん制度改革は必要です。公務員は二割削減すべきです。改革は未来を見ながらすべきものです。ただストイックになるだけでは、だめです。改革は先の世界を描きながらやらないとマインドが冷え込んだら、何もうまく行かない。
 
波高い鹿島の海。太平洋大西洋越え、
地球を半周して、僕の祈りよ、届け。  ↓
 鹿島の海
 今から二回り前頃、1997年のうさぎ年の前後五年ぐらい。よく頭の中が詰まると鹿島の海に行った。半日、時には夜の海を眺めていると、心が落ち着いた。荒れた海が好きだった。
 お陰で僕は人生の転機を乗り切ることができた。新聞を出したり、仕事を今の大工に変えたり、また砂絵シリーズの作品はここの砂から始まった。
 先々のこと考えたら何かヒントを見つけるかもしれないと、思ったのだが、アレックス追悼一色になってしまった。そんな場所だから、追悼には最良の場所だったと思う。
 でも、これからのヒントはまだ気づかぬ場所なんだと思う。同じことは起こらないから。

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 訃報 アレックスの死。
 ミュンヘンのミミ姉の連れ合い、アレクサンダー・ベルナール(ピアニスト)が2/22ミュンヘンの病院で亡くなりました。僕と同じ年なので59か60歳。
 この新聞の読者で彼を知っている人はごく少数ですが、同じ年と言うこともあり、ミミ姉を通して親しくしていた友人です。
 こんな早く死んで馬鹿野郎!と言う感情がなかなか収まらない。冥福を祈る。(ま)   写真は一月末倒れて入院時。

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