↑prev mari-top next↓

〝 あの日… 〟 首吊りの日々の中で…
 
 
 「えー、ご愁傷様です。」寝ている私の耳もとで男がささやく。
  「げっ!何だ?私は死んでいるのか…?」
 「えー、誠にバカバカしい御支払いを…。…しはらいを…。」〈 なんだよ。ディレィがかかってんじゃん。 〉
 
 変な耳なりだナ。あ、コウタロ先生、おはようございます。朝だね!それにしても変な朝、「ここんとこ、春めいてきたし、先生落ち着かないね。どうしたの?」と頭をかきかきお湯をわかす。
 
 「コーヒー、コーヒー、これを飲まないと目がさめないし、それにしても朝からなんだか変な声。おふくろが天国に行ってから、やはり変。おやじもよれよれになっているし、同じ事をなんども言ってくる。きっとそれが原因だ。しっかりしてないのに、しっかりしなくちゃ…と。右ほっぺたを自分でピシッ!とたたく。あ、首が"ぺきっ!"無理しないようにしよう。ナンジャクに出来ている。田舎の自然の中にいた頃は、ギンギン動けていたのに…。そういや、都会に戻ってきて、てんでダメ。ちらっと下半身に目をやると、した腹が妙に「プテッ!」としてきた。よし、もっと、太ってやる。もっと太ってから筋肉をしめよう。筋トレだ。まずは、コウタロ先生のお供で、全力ダッシュ300m、これがきついんだ。 
 先生にむかって「おまえっ!ゆっくり走れ。ばか者。ゆっくりだっつーのに…。」100m時点で"お願い!先生速すぎます。"先生は全然きいてくれない。主人を無視して走りまくる。「がーっ。おまえはっ!」こっちも、コーヒーは飲んだが、朝からもさもさの髪をふりみだし、どなりちらしながら『走っている』
 "これは、走らされているんだ"こっちもむきになって加速して走ったりすると、いきなり止まって先生おしっこTime。こっちがブロックべいに激突した事もある。
 = 本当に、よそのわんこは、上品にお散歩しているのに…何で…? = あ~、やっと目がさめてきた。「先生、便秘は良くないですから、すっきりしちゃって下さい。」
 
 そのあとの先生のさわやかな顔。それからゆっくり、軽めのジョギングとなる。やっとこさ、おうちに帰り、朝ごはんのの時間。仕事はほとんどないし、医者は嫌いなのに、医者に行き、首を吊る。もう背骨まできテル。
 おふくろのかたずけをちょっとずつしにゆく。内心"ダメだぁ…また想いだしちゃって…。てもまだ、涙を流してない。泣きたいのに、"涙が出てこないんだ。ホントにやんなっちゃうなー。
 
 
 いつもスッカラピーなんだから。うちの近所のリサイクル屋の常連になっちゃたし、「あ~、昼だ、昼だ。昼ごはんは"ちやあはん"とっとと食べて、昼コーヒー。コーヒーの入ったカップをこたつテーブルの上にに置き、ふっ…と一息いれようかな。その瞬間。"ズン、"(ブル、ブル、ブル、ブル、ブルーーーーーーー、ブル…ブル) ん、地震だ、① 火の元せんをしめて、② えーっと、電気こたつのコンセントをぬく"あれ、なんか長いな…、ちらっと、まだのんでないコーヒーに目をやると、『こぼれてる』コウタロ先生はこたつにもぐって、ホットドッグ状態だったが、"やばい"という顔をして出てくる。③ ラジオのスイッチを入れ、ベランダの窓を30cm位あけとく。④ すぐ厚手のジャケットをあたまにかぶり、同時に押し入れシェルター(いつもは先生のお休み処、30cmぐらいあけてある。中には毛布とコザ)の入口付近で中腰になり、外の様子をみる。⑤←{注 この数字は、地震を感じてからの私のいつものカウントです。(5秒かな?)} とたんに、グワ  グワ  グララッグワ × time。ラジオの声は、ほとんど同時通訳の様(テンパッテイル。)
 
 "緊急地震速報"が次々と、先生の顔はひきつり、心臓バクバクの状態。先生の胸をさすりながら、"大丈夫、大丈夫"シェルターに入ってて、ここだよ!しばらくラジオは、つけっぱなし、やっぱり緊張するよね。
 地震速報を覚えた先生は、主人はさておき、速報がなると押し入れシェルターに、とっとと、入るようになった。
 "がー、コーヒーが飲めない。コーヒーはカップはころげないがこぼれている。お祈りをして、コウタロ先生と、押し入れシェルターに。"この地震デカい…。しばらくしておさまり、アパートの道一本むこうの畑で作業していた、初老のおじさんにラジオを持っていって知らせる。
 「おいさん、大丈夫?地震だョ。大きかったね。ケガなぁい?」「あ~、ねぎ植えていたらよー。鳥っ子は飛んでくし、向かいのシャッターはバラバラいっているし、足もとはグラグラしているし、「おいさん、二日酔いか?」「飲んでねェッ。」「電信柱も~」ビックリするよな~。「おいさん、また地震くるかもしんないから気をつけてよ。」私、うちに戻るね。アパートにもどると…
 となりに住んでいる、沖縄人うちなんちゅうのにーに玄関前で出会った。「大丈夫だった?」ときくと…。「わー、西武線乗ってたら、電車の中で地震はじまって、東伏見の駅で停車して、ホームにおりたら、とたんにグラグラしちゃって、電車の中はパニック状態だった…。急いで帰ってきたら、おうちの中に物がおちてて、ガスが止まってる…。"やっぱり顔がひきつっている"」「ん、ガス開けたげる。ココのボタンを押すとあくよ。」「東京でもこんなん初めてだよ…。デカイッ!火の元に気をつけましょうね。どーも。」と、自分の家へ、コウタロ先生におやつをあげて、やっとコーヒー飲んだら、冷めていた。友人にメールを何本か入れる。"自分が大丈夫っていうのと、相手の大丈夫の確認。それと、これ原発アブナイよ!とコール。その後の行動。深呼吸しながら、夕御飯を考える。
 
 押し入れあけて、防災用品の点検(キャンプ用品)たりないものがたくさん。
 夕御飯終え、「やっぱ、こりゃ眠れない。コウタロ、ビール買ってくる。」ビールを買ってプシュッ!と飲り、「コウタロ。今日はたいへんだったね。コワかったよね。かぁちゃんは、もう、とっとと寝ます。お前は、犬だから、『番』しとけ。おやすみ。あ、ラジオはつけてとくから、何かあったら、かぁちゃん起こして守ってね。シェルターもあるから……。しゃ、おやすみ。おまえを愛しているよ。」といい残し、そのまま、バタッ…。と深い眠りについた。心もち、明朝、起きる事なく。永眠していたらやだな…。と、思いながら…。
 
 真夜中…。細かい震動を感じ、ふっ…と目を覚ますと、コウタロ先生、私が寝ている傍にピタッとおすわりし、プルプル震えながら、玄関の方を見すえ、しっかり『番』をしてくれていた。こいつぅ。ちゃんと言うこときいている。朝の散歩の時は、ぜんぜんゆうこときかないのに…。ちゃんと『番』してんだ…。コウタロ、もう寝なよ!「ありがとう。」おふとんもぐって寝よ。また明日ね。コウタロ先生、恐いのを我慢しながら、プルプル震えながらいてくれたのでした。おふとんは暖かいね。コウタロ先生頑張ったね。おやすみ。zzz…。
 
 ( ウトウトしながら思ったのだが、デカそうなのが来た時は、ブレーカーもおとした方が、安全だな…。あとはぁ…シェルターの中に、「水」とビスケットと、ライト…   あ~、あしたも『首吊り』だ~。  むにゃむにゃ…… )
 
麻梨
↑prev mari-top next↓