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野菜とバラの日々

こまきみどり



 路上生活の人が、ふえているらしい。夏なら、それもいいかもしれない。いいえ、夏は暑く、冬は寒い。家があり、雨風をしのぎ、願わくば快適な生活をしたいのが人間です。いずれ人はこの世から消える。それまでの人生を生きるのに、健康で、文化的で、快適で、しあわせで、基本的人権が尊重され、納得して死を受け入れることができればいい。しかし、なかなかそうはいかない。  

 世界はあまりにもひどい。60億の人口を食わせるだけの食料がない。8億のア
ジアの子供たちが飢えて餓死寸前になっている。日本は金に物を言わせ、飽食ならぬ、放食になっている。食べられもせず捨てられる食料が、生ゴミの半分にもなる。そのためのゴミ焼却炉が280億もするらしい。まちがっている。どう考えても私は納得できない。税金じゃないか。ここに相模原市民として、市のやり方に反旗をひるがえす。と言ってみたところで疲れるばかりだ。  

 最近、野菜の皮むき器というものを買った。いままでは、包丁で皮をむいていたのだけれど、手をけがしたのをきっかけに、使ってみるとこれが実に便利なのだ。これではどんどん、なんでも、皮をむきたくなる。しかし、わたしはエコクッキングを心がけている。たとえば、にんじんはよく洗えばいい。大根は、よく洗ってから、包丁で皮をむき、その皮は千切りにして、ごま油で炒めて、唐辛子と醤油で味付けをして酒のつまみにする。これがおいしい。キャベツやブロッコリーなどの芯も、細かく刻んでゆでれば食べられる。イタリアンドレッシングか、マスタードマヨネーズでサラダになる。じゃがいも、里芋などの皮はむくけれど、堆肥化する。みかんの皮は干して、風呂に入るとき、網に入れて、みかん湯にする。これで、化学的なものを買わず、入れ物も捨てずにすむ。かぜもひかない。やたらにゴミを出す生活と、人間をも使いすてにする社会と、構造的につながっている資本主義的思想がある。それがこわい。自衛隊を派兵したことで、もはや帝国主義的といえるかもしれない。


 エコ家計簿とかの、電気、ガス、の使用量と金額を書いてみた。2002年と、2003年では、かなり減らせた。たとえば、2002年の2月の電気代は30000円を超えていたのに2003年は12000円に減っていた。ガスも水道も減った。特にけちけちした覚えはない。だらだらした生活を少しだけ、てきぱきして、夜は、はやく寝たぐらいか。そうなるとうれしくて、穴のあいたセーター、すり切れたオーバー、かかとが減った靴、それらがすべて楽しくてならないのはいったいなんだろう。自虐史観というわけではない。自分の生き方をしている、ということがなにやら、ざまあみろってんだ、という気分なのだ。むだな抵抗、いいえ、レジスタンスのつもりなのだ。それにしても憲法9条をなし崩しにされ、ストレスがたまるので、花を買いに行った。1年草の使い捨てが多く、パンジーなどがやたらにある。 


 バラの苗木を売っていた。CLピースと書いてあり、大輪の黄色いバラだという。衝動買いしてしまった。まさかツルバラだとは知らなかった。ホームページで調べてみた。つるバラのピースは、1949年に作られ、元のバラはつるではなく1939年に作られた。フランスのフランシス・メイアンが作り、メイアンの母の名、マダム・アントワーヌ・メイアンと名づけられた。時は第2次世界大戦のさなか、バラも焼失の憂き目にあうところで、ひそかにアメリカに送られ、ドイツ軍から守られた。1945年、4月29日、太平洋岸バラ園芸協会の全国大会の席上に、重大ニュースがとびこむ前から、そのバラの名は「ピース」と決まっていたが、「ベルリン陥落」のニュースはあまりにも時を得ていたと言えよう。5月8日、サンフランシスコで、国連創設のための協議会に50カ国の連合国側の代表が集まった。その代表たちのホテルの自室に、みたこともない大きな黄色いバラが届けられた。カードには次のように書かれていた。  


 「このバラは、去る4月29日、ベルリン陥落の日に、パサデナにおいて、ピースと命名された。願わくば、この花の名において全世界に、恒久の平和と安定が、もたらされるよう、ご活躍をお祈り申し上げます。全米バラ園芸協会事務局長 アール・c・アレン」

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