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          法性寺入道前関白太政大臣家歌合に
     鶉なく交野かたのにたてるはじ紅葉
      ちりぬばかりに秋風ぞふく
(新古今)    藤原親隆


【訳】鶉の鳴き声がする交野に、紅葉した櫨(はぜ)の木が立っていて――その葉を散らしてしまうほどに激しく秋風が吹いている。
 法性寺入道前関白太政大臣:藤原忠通。  交野:大阪府枚方市あたり。皇室の御領で、古来狩猟地として名高い。 はじ:ハゼの木。もちろん下の琉球ハゼではなく、野生の山ハゼであろう。





     櫨紅葉にも燃ゆる色沈む色         稲畑汀子











    






 はぜのき (りゅうきゅうはぜ)
                  Rhus succedanea L.  〔うるし科〕

 関東より西の本州、四国、九州など暖地にはえる落葉高木。元来はろうを採るため栽培されたものから野生となったもの。現在も栽培されている。幹の高さは10m位になり枝はまばらに出る。葉は寄数羽状複葉で枝梢に互生している。4~6対の小葉をもち、小葉は皮針形または卵状皮針形で全縁、先瑞は長く鋭く尖り、基部もまたやや尖っている。小葉の長さは5~8cm位、やや厚質で毛はない。雌堆異株。5~6月頃円錐花序をつけ黄緑色の小さな花を咲かせる。花序は梢の先の葉腋から生じ長さ10cm位ある。がくは5裂し、5個の花弁は卵状楕円形。雄花は5本の堆しべをもつ。雌花には小形の5本の雄しべと1子房があり柱頭は三つに分れている。核果は楕円形で白く毛はなく、長径は約1cm位。これから蝋(ろう)をとる。秋の紅葉がすばらしい。
〔日本名〕ハゼノキというが本来のハゼではなく、昔琉球から入ってきたもの。琉球ハゼの名はそれを示す。
〔漢名〕紅包樹。              -牧野植物図鑑-








       櫨紅葉 我が青春にて 燃えにけり      まもる

 ハゼというと真赤に紅葉した美しさです。若い頃九州に行き、生まれた東北とは趣の違った晩秋の野山の風景に驚いた。晩秋の、青い海、青々したみかん畑の緑とみかんのオレンジ色、その上に鮮やかに紅葉したハゼ、青い澄んだ空と色の対比は美しい。ハゼはなかなか散らず一月ごろまで楽しめる。僕の青春の一風景でした。今でも、数々の思い出と共に、今でも心の奥に生きている。
 昔、米沢藩の上杉鷹山が藩政改革でやった殖産事業の中で、うるしの木からの蝋製造の事業は見事に失敗した。それはその頃、ハゼが沖縄から移植され、西国諸国に広まったためです。ハゼ蝋のほうが安価に製造でき、しかも良質だからです。  (まもる)

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