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あしひきの 山桜花 日け並べて
   かく咲きたらば いと恋ひめやも
                 万葉集 山部赤人


花の色は 移りにけりな いたづらに
   我が身世にふる ながめせし間に
                  古今集 小野小町


おしなべて 花の盛に なりにけり
   山のはごとに かかる白雲
                  山家集 西行


山桜 散らばちらなむ 惜しげなみ
   よしや人見ず 花の名だてに
                  金槐和歌集 源実朝


花の雲 鐘は上野か 浅草か       松尾芭蕉


散る桜 残る桜も 散る桜        良寛
しき島の やまとごころを 人とはば
   朝日ににほふ 山ざくら花     本居宣長






 桜の霊である
「木之花咲耶姫(このはなさくやひめ)」が最初の桜のタネを 富士山からまいたといわれ、「さくやひめ」の名前から「さくら」になったらしい。
 なお、「木之花」は「此花」と書かれることもある。此花咲耶姫→ ”この花(桜)のように美しい姫”。「古事記」より






 日本には100種の桜が自生し、200の園芸種がありますが、原種は以下の十種類だけです。
  ・ヤマザクラ(山桜)・オオヤマザクラ(大山桜)
  ・カスミザクラ(霞桜)・オオシマザクラ(大島桜)
  ・エドヒガン(江戸彼岸)・チョウジザクラ(丁子桜)
  ・マメザクラ(豆桜)・タカネザクラ(高嶺桜)
  ・ミヤマザクラ(深山桜)・カンヒザクラ(寒緋桜)






・薬効   解熱、せきどめ
・薬用部位 樹皮の内側(内皮)
・生薬名 「桜皮(おうひ)」








そめいよしの        〔ばら科〕
Prunus yedoensis Matsum
 庭園土手等に栽植される落葉高木で高さ7m 内外、樹皮は灰色、枝は四方にひろがり、若枝は有毛または無毛、葉は有柄で互生、広い倒卵形、先端は急に尖り、長さ8cm内外、ふちには鋭い重きょ歯があり、両面には葉柄とともにうすく細毛がある。成長するにつれて光沢を増す。4月初め、新葉より先に散形状に密集した淡紅白色の数個の花を開き、全枝が花でうずまり美しい。花柄は長く細毛がある。がくは短い筒形で下部がふくれ細毛があり、5がく片は水平に開出する。花弁は5、楕円形、凹頭、雄しべは多数、花柱には微毛がある。核果は球形、径7~8mm、紫黒色に熱し、多汁である。
 [日本名]染井吉野。はじめ東京の染井の植木屋から世にひろがったためである。元来植木屋では本種を吉野と呼んで桜の名所,吉野山の桜になぞらえていたが、単に吉野といったのでは、吉野の山桜と混同するので、明治5年(1872)にはじめて染井吉野の名がつけられた。本種は明治維新直前頃にはじめて東京に出現したもので、江戸の桜ではないであろうから、これに yedoensis の種名をつけたのは適切ではない。朝鮮の済州島に本種が自生することがわかっているが、一般に栽植されているものは、系統を異にしているであろう。ウバヒガンとオオシマザクラの雑種であろうというのが一番可能性がある。      (注 ウバヒガン=エドヒガン)
-牧野植物図鑑-







  今回は桜です。最初に富士桜を扱ったので、遠慮していました。万葉集では梅に押されて少ないかと思ったが、そんなことはない、たくさん詠まれていた。古代から信仰の花であり、民族の花であったということです。
 ソメイヨシノが済州島原産というのは、明治の頃の日本の植物学者が言い出したことです。現在は遺伝子解析で、済州島の桜はオオヤマサクラとエドヒガンの雑種、ソメイヨシノはオオシマサクラとエドヒガンの雑種で別種類と認定されています。専門家が間違えるほど似ているのです。
 更に韓国には政治的理由があるのです。戦後日本人が植えた朝鮮半島のソメイヨシノは全て伐採されました。しかし在日の人が故郷にソメイヨシノを植え、それが名所になったのです。一度否定した花故、ソメイヨシノを楽しめない。そこで済州島起源説なら、韓国の花として楽しむことが出来る。そんな理由からです。(ま)


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