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ひさかたの 天の原より 生れ来るあれこる、
神の命みこと、奥山の賢木さかきの枝に、白香しらかつけ、
木綿ゆふ取り付けて、斎瓮いはひへを、斎いはひ掘り据すゑ、
竹玉たかたまを、繁しじに貫ぬき垂たれ、獣ししじもの、
膝ひざ折り伏して、たわや女めの、襲おす取り懸け、
かくだにも、我れは祈こひなむ、君に逢はじかも
万葉集 大伴坂上郎女
神垣はしるしの杉もなきものを
いかにまがへて折れる榊ぞ
源氏物語 賢木(さかき) 六条御息所
少女子があたりと思へば榊葉の
香をなつかしみとめてこそ折れ
源氏物語 賢木(さかき) 光源氏
学名 : Cleyera japonica (現在)
Cleyera : サカキ属 japonica : 日本の
Cleyera は、17世紀のオランダの船医で、アジアの薬草研究家の「Cleyerさん」の名にちなむ。
常に緑の葉が繁っていることから「栄える木」が略されて「さかき」になったとも、神が鎮座する地の境の木とのことから「境木(さかき)」になったともいわれる。
(栄木、栄樹、賢木、境木など)漢字の「榊」はまさに「神」の「木」。
枝、葉は神前に玉串として供えられるなど、神事用として使われる。(供えられるのは正式にはこの「榊」だが、実際には「柃(ひさかき)」の葉が使われることの方が多い)
さ か き
〔つばき科〕
Cleyera ochnacea DC (=Sakakia ochnacea Nakai)
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関東から西の山林中にはえる常緑の亜高木で、また通常神社の庭や墓地に植えられる。葉は厚く、葉柄があり互生し,枝の上に2列に付き、長楕円状倒卵形で長さ8 cm前後, 先の方は鋭く細くなっているが末端は丸く、全縁で表面はつるつるしていて質は強いがもろい.枝の先端の芽の最外の鱗片1個が大きく、弓のように曲って鳥の爪の形をしているのは特徴である。夏に花柄のある花を肢生し、花は1~3個が東になって付き,下向きに開く。緑色のがく片は5個。花弁は5個で、下部は互に寄り集まり、白色で後に黄色味を帯びる。雄しべは多数、やくには逆向きの毛があり、雌しべは1本.液果は球形、径4mmほどで、熟すると黒くなり,多数の種子がある。
〔日本名〕サカキ〔栄樹〕で、年中葉が緑色であるためといわれる。〔漢名] 楊桐は多分誤りであろう。榊の字は国字であって神道の神事につかうことからできた。なお本州中部ではサカキが少ないので神事にこの名で使用されるものはほとんどヒサカキである。
-牧野植物図鑑- |
冬や正月の草木で、榊は忘れていました。雪が降り広葉樹が散ってしまう冬場、常緑の木にへの渇望は、様々な園芸種がある現在とは、比べものにないほど強かったと言うことですね。さて、万葉集に出てくる、正月や冬を象徴する草木は、この辺が最後ですね。来年はどうしましょうか。 (ま)
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