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あしひきの 山橘の 色に出でよ
  語らひ継ぎて 逢ふこともあらむ   
万葉集 春日王


紫の 糸をぞ我が縒る あしひきの
       山橘を 貫かむと思ひて  
万葉集 作者不明


あしひきの 山橘の 色に出でて
     我は恋ひなむを 人目難みすな  
万葉集 作者不明


この雪の 消残る時に いざ行かな
          山橘の 実の照るも見む
消残りの 雪にあへ照る あしひきの
      山橘を つとに摘み来な   
万葉集 大伴家持


我が恋を しのびかねては あしひきの
   山橘の 色にいでぬべし    
題しらず  古今集 紀友則






冬に赤い実を付け、名に「両」のつく植物


万  両
(ヤブタチバナ)

花言葉:固い誓い 慶祝

高さ1m
ヤブコウジ科
千  両
草珊瑚(クササンゴ)

花言葉:可憐 富貴

高さ50cm
センリョウ科
百  両
唐橘(カラタチバナ)

花言葉:富、財産

高さ1m
ヤブコウジ科
十  両
藪柑子(ヤブコウジ)
古名 やまたちばな

花言葉:明日の幸福

高さ30cm
ヤブコウジ科
一  両
蟻通(アリドウシ)



高さ60cm
アカネ科


 千両万両は知っていましたが、一両まであるとは驚きです。
 恐らく江戸時代の空前の園芸ブームで、唐橘(カラタチバナ)は百両もの高額で取引され、別名「百両」と呼ばれるようになった。明治以降、更に多くの赤い実を付けるものを千両、万両と命名され、それより少ないものを、十両、一両と呼ばれるようになったのでしょう。
 百両はヤブコウジの名は近代になって付けられたが、 古くは赤い果実を山のミカンに見立てたヤマタチバナ(山橘) の名で良く知られていた。
 一両(アリドウシ)は常緑小低木。腋に鋭い長い刺がある葉の付け根から出ているトゲが蟻をも刺し通すという意味です。 正月のおめでたいときの飾ります。「千両、万両あってもアリドオシがないと正月の飾り物として完璧ではなのです。





  や ぶ こ う じ   Ardisia japonica B1.   〔やぶこうじ科〕
 朝鮮、台湾、中国などに分布し、北海道南部から九州に至る山地の木かげにはえる常緑小形の低木である。地下茎をのばして繁殖し、茎は直立してほとんど枝わかれせず、高さ10~20cmとなる。またしばしば観賞用としても,植えられる。葉は互生し、茎の上部に1~2層輸生状につき、長楕円形で先はとがり、長さ6~13cm、幅2~5cm、ふちには細かいきょ歯があり、質は厚くつやがある.夏、葉やりん片葉のわきから横に花柄を出し、2~5個の白色の小さい花を下垂する.がくは深く5裂し、裂片は広卵形でとがる。花冠は浅い皿状で深く5裂し、径6~8mm、裂片は卵形でとがり腺点がある。雄しぺは5本、やくは花の中央に集って花柱をとりまき、雌しぺは1本。果実は球形で径5~6mm、赤く熱して下垂し美しく、1個の大きな種子をもつ。
〔漢名〕 紫金牛。
-牧野植物図鑑-








  今回は冬に赤い実を付ける縁起物として、万葉集に数多く詠まれた山橘を取り上げました。時代が下るに従い、多くの赤い実をつける園芸種がもてはやされるようになりました。山橘、ヤブコウジと自覚して見たことがないので、今冬は探して見よう。    (ま)

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