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「庭で突然変異した、アフリカ原産の夕顔とラッキーブルー朝顔」
澤村浩行
 
 ここバイパス外苑の、一戸建て住宅地域と田園混在の地も、家の灯りが年ごとに少なくなる。つばめの飛来もコウモリの乱舞も少なくなる。蝶やハチやトンボ等の虫が農薬で少なくなる。そういえば新型コロナ全方向直線的に伝播したのは、コウモリの乱舞に似ている。
 やはり、あれは細菌兵器ではなく、コウモリの内臓を住みかとしていたウイルスが次の住みかを求めて地球上で乱舞している。SNSやLCCを馳駆して地球を乱舞している。人類を、こりゃ相性が良さそうだと、次の住みかとすべく飛んでいるのだろう。相性がよい人に当たれば、ウイルスは逆毒素化し、その人には抗体が出来、子孫に至るまで共生する。ウイルスが当てにしていた次の住み家が弱すぎたら、共倒れとなる。生物体とウイルスの数量を調節するのもお互いの出逢いが果たすお役目だ。人間を含む生物はそのように、分け隔てないまで付き合ってきた。
 年齢別逆ピラミッド型の人口構成の上方を崩してやろうという、自然の摂理とも総意ともいう存在が、後押しをしているかも知れない。僕も78歳。崩れる逆ピラミッド型の一辺となって埋もれるのも慈悲の賜物と受け止めよう。
 
 いつのまにか9年間住み着いた山口市で、子供の姿に出逢うのは、は、小中学校の登下校のみ、がほとんどだった。私塾の密度がとても濃く、エリートの目指す県立山口高校から、東京大学経済学部か法学部に入学して官庁のキャリアー組まで上れば、維新以来の長州系保守政治家に引き立てられる。元国税庁長官佐川氏、財務相決裁文書改竄を強いられた赤木氏が自死した、当時の理財局長はその一例だ。だから子供の頃から切磋琢磨の塾通いをする。やんちゃなガキや不良少年少女の影は薄い土地柄だ。但し、コロナ休校の時には、少子高齢化全国4位の山口に、これほど若い家族がいたのか!と驚いた。若い父親が童心にかえって、わが子と遊ぶ姿。そして、夜の蛙の合唱は、二つ向こうの田んぼ一枚が住宅化したから、声量は弱くなったが、その中に、南アジアの奇声スター、ゲッコーそっくりの蛙の声が不器用に混じっている。
 確かに陽光の角度は毎年ズレている。庭に射し込む陽光の量と面積が増えている。夏至の日に再確認した。カナダのエスキモ~が同様のことを言った、というニュースを見た。
 
 ところで、このコロナ・リトリート中に最も衝撃を受けたのは、車を持たない僕、この駐車場のアスファルト上に土を盛り、大きな石で囲った庭をこれまでのように外来種で飾り立てるよりも、土地に慣れ親しんだというだけの素直な、雑草園としてあるがままにほったらかそうと決めていた時に、突然無数の緑色した触手と舌を全方向にせり上がらせて出現した植物性エイリアンの出現だった。去年の遅い梅雨入りにも、我が住居の片方の脇と前面を遮断しているブロック塀に咲き誇った色とりどりのハイブリッド朝顔のこぼれ種から、青紫したのだけがしっかり成長して、塀一面につたと葉っぱをそそりあげ、その上に大きな花を連ねたことだ。8年続けて初めてだ。これまで、ハイブリッド朝顔のこぼれ種は、数センチよろよろ育つと溶けたように消えた。毎年のハイブリッド種を買って撒くのがむなしくなって、野生の種を求めていたが、予定していた何ヵ所かが雑草として根こそぎやられていたので、恒例の夏の風物詩を楽しみとしていた隣近所も喜んでくれた。
 花は大きく紫がかった青色をしているが、その数はハイブッドと比べれば圧倒的に少ない。そして、夕方近くに青からピンク色に変色する。近所の花好きなおばあさんが、「ラッキーブルー朝顔と同じ色の変化だけど、これはアフリカ原産の夕顔太いツタとぶ厚く大きな葉っぱをしている。こぼれ種どうしでかけ合わさったのかねぇ」と首をかしげていた。
 でも僕はラッキーブルーを植えた憶えはない。もしかしたら、毎朝庭に出ると、2㎞はある正面の丘の一角からまっしぐらにここを目指して飛んでくるつがいの山鳩が、置き土産に落として行ったもののかけ合わせなのかも知れない。僕は毎朝一番に庭に出て歩き廻るつがいの野鳩にほだされて、もう何年も米粒を放ってやっている。
 
 前のブロック塀の向こう側で83才となっても二反畑を続けている農家のお爺さんは、時にはハイブリッドも先祖返りをする、と言った。そして、僕が去年から水やりをせず、近所から集めた枯れ葉でふくれあがったゴミ袋を次々と運び庭に埋めたり、田舎の友達が土を袋に一杯運び積み上げる姿や、散歩のたびに花や葉っぱのきれいな雑草を嬉々として植えるのを見ている。そして、これほどつたや葉っぱがはびこったのは、根っこが塀とアスファルトの隙間からアスファルトの裏の土にまで届いて、下にたっぷりたまっている水と養分を吸い上げているからだろう、とも言った。(お前さんの生き方みたいだで~)とでも言うように。彼とは、反原発ではまったく意気投合している仲だ。
              
2020 夏
 


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