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 六 月
 ~ 病 い ~ 
雨の季節に病いの話はチョときつい。

  5、6年前、向こうから一方的に縁を切った、弟分のAT君から突然電話が入った。

  「ムトウさん1億5千万やるから、
女性を紹介してほしい。」

  ムムッ、とうとう僕にも運が向いて
きたか、遺産か、宝くじか。

  「電気霊界から・・・」

  いや、ちょっとオカシイゾ、
とにかく一度あいましょうか。

  ほどなく、手紙や、絵を送ってきた。

  ああAT君、すっかりあちらの世界にお住まい。やはりお金もあちらの世界のお告げか。残念。




  一週間後、埼玉のとある駅で再開。
5年の空白なのに20年も会わなかったようにAT君は老け込んで見えた。
 車は秩父方面に向け走り出した。家々の庭先には、黄色や白い花が咲き乱れ、休耕田はポピーの赤い花で埋め尽くされていた。
  もう六年間、電気霊界から言葉が聞こえると言う。一時入院し、カウンセリングを受けているが、消えないと言う。
  「こだわりを捨てなさい、さすれば他のことが見えてくるし、言葉も消える。」と仏教の教えにそって、説いてみたのたが。AT君の再起は無理かも知れない。

  四時間話し、彼の家の近くで分かれた。
まさしく彼は地獄の中にいるのです。あの世の話ではなくこの世のこと。でも、すべて彼が自分で招いたもの、他人の僕が出来る事は少ない。

  何とまあ、病む友の多いことか。一人が消えるとまた新たにやってくる。

  月が代わり、しとしとと雨が青みをおび始めた紫陽花を濡らしています。この季節、病いの話はチトきつい。

 2009 6/5 Mamoru Muto 
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