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恐   怖


今朝は恐怖で目覚めた。
血圧が上がり、意識が回復に従い、
恐怖は薄らいでいった。

僕の記憶の奥をのぞき込んでも、
もう、思い出すことは出来ないが、
赤ん坊は底知れぬ恐怖の中で生きている。


寝ている場所や時間。
暖かい蒲団や、今日の予定、明日の予定が、
僕の意識の中に、流れ込んでくる。
それらは、僕の安全を保障するなにものでもないのです。
ゆえに、僕の感じた恐怖は徐々に薄らいで行く。


赤ん坊は、大人の何倍もの感覚器官をフル動員し、
何倍もの脳細胞をフル回転しながら、
何が安全で何か危険か分析しているのです。
唯一「母」だけが、自分の安全の保障する存在のです。

泣くのは、その母に自分の窮状を訴えるため。
笑うのは、己の満足というよりは、
その母の心を繋ぎ止めておく為の必死の演技なのです。


「恐怖」、それは自分を日常の安全弁から解き放なち、
最もピュアーな自分と出会うことの出来る、数少ない機会。
環境に順応してしまった自分を返り見る、大きなチャンス。

Mamoru Muto 2009 3/25

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