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 八 月 


 
 夏の暑さが頂点に達し、これからはものの陰が伸び始める。 
 陽と陰、喜びと悲しみが、両極端に写し出される季節。 
 山や海では若者達や子供達の歓声が谺し、一斉に勢いを増す蝉の声。 
 それと正反対に、 
 この国では敗戦の記憶が語られ、盂蘭盆会が催される。 



 内向きな僕は、光のより陰部分に心は馳せる。 
 お盆過ぎの、もの寂しい気分が好きだ。 
 ヒグラシや、ツクツクホウシの蝉の声もいい。 
 残暑の空に、久遠の秋空を先取りするのも良い。 





 何やら今年は、北京の馬鹿騒ぎに、 
 マスコミは完全に占領されてしまった。 
 NHKがオリンピック前に戦争特集を組んではいたが、 
 連日の競技の勝敗報道に、何もかもが呑み込まれてしまった。 



 例年ごとく、新たに見つけた公園の木の下、 
 簡易ベット、お水、コーラ、カメラ、携帯、タオルを 
 芝生の上にばらまき、ただ蝉たちの協奏曲に耳を傾ける。 
 32℃を超えたら、こういう過ごし方が一番いい。 


 まだ、久遠の空を感じられない。 
 見る間に空を覆ってしまった雷雲から、 
 激しい夕立が降りまじめ、今日は逃げ帰ってきた。 



 八月も半分。 
 明日でお盆も終わる。 
 来週からは、徐々に人々は、いつの日常に戻る。 
 僕はもうしばらく、この暑い日々をやり過ごし、 
       いつもの日常に戻る。 
 さて今年は、しっとりした気分を 
           どれほど楽しむことが出来るやら。 


 2008 8/15 Maoru Muto 

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