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古い詩 


ちよっとのぞき込んだ押入の段ボール箱。
メモ帳に走り書きした文字の連なり、
僕の青春が次から次と蘇える。

悲しかったり、苦しかったことの方が多かったのに
楽しかったことだけが次々と浮かび上がる。
時間の魔法のなす術わざなのでしょうか。
それとも一杯泪を流したお陰でしょうか。


綿入れ半纏とビーチサンダル、それが僕の正装。
丸の内のビジネス街も、霞ヶ関の官庁街も、
治外法権の無頼漢として押し通した。

水俣病患者支援というのは名目。
青春のエネルギーをぶつける場所を
見つけることが出来た、僕は幸せ者。


最期まで、意地っ張りを通してしまった。
止めなくてよかったのに、
大学に退学届けを出しに行ったり、
静かに身を退けばいいものを、
「運動から抜ける」と
わざわざ皆の前で宣言したり、
女の子の優しい言葉に、
素直に「助けて」言えなかったり、
・・・と。

でもそれは、心の中には風が荒れ狂っていて、
本当に無器用で、ぶっきらぼうにしかできなかった。
「ああ、馬鹿だった」と、ひとりクスクス思いだし笑い。

時が経ち、もうとっくに風も止み、毒気は十分浄化された。
やっと、心から笑えるようになりました。


忘れていた段ボール箱。
デッサン帳の端に綴られた言葉の連なり、
遠い青春が、再び蘇る。

楽しかった思い出だけが、
キラキラ輝きながら飛び回る。


4/27 2008 Mamoru Muto

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