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丈夫ますらをと 思へるものを 大刀たちきて
かにはの田井たいに 世理せりぞ摘みける
薩の妙観の命婦さつのみょうかんのみょうふ (万葉集)




あかねさす 昼は田たびて ぬばたまの
夜の暇いとまに 摘つめる芹子せりこれ
葛城 王 かずらきの おおきみ (万葉集)




芹の香や 摘あらしたる 道の泥 
 太祇  




装ひて来る 村嬢や 芹の水 
高浜虚子










春の七草


せりなずな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草
14世紀の南北朝時代の四辻の左大臣が詠んだ歌から 「春の七草」とい名が定着した。

君がため 春の野に出でて 若菜つむ 我が衣手に 雪は降りつつ
(若菜 = 春の七草)
光孝天皇こうこうてんのう 「古今集」 百人一首














せ り   Oenanthe stolonifera DC.      〔せり科〕



 湿った所や溝の中によく茂る多年生草本で、東南アジアにひろく分布する数本の長くてやや太い白いほふく枝を出してふえる。秋にほふく枝の節から新苗を出し、冬を越して春に最も盛に生長する。根生葉は集まってつき、茎生葉は互生し、2回羽状複葉、全体は三角形、小葉は卵形できょ歯がある。根生葉には長い柄があり、茎生葉では柄ば段々短かくなり、両方とも柄の基部はさやとなっている。夏に直立する花茎を出し、30cm内外に達し、緑色で稜がある。枝先に小さい複散形花序を出して白色小花を開く。花弁は5個で内側に曲り、雄しべ5本、1個の下位子房がある。果実は楕円形で長い花柱をもつ。分果のへりの隆起はコルク質となる。葉にはかおりがあって食用にされ、しばしば栽培されることがある。
〔日本名〕新苗のたくさん出る有様がせ(競)り合っているようだからついたという説がある。 〔漢名〕水斳。

-牧野植物図鑑-

図鑑調べて、人参、三つ葉も同じ芹科の仲間。人参が芹科とは驚きであった。(ま)











  多摩川は湧水の多いところです。一昨年の三月の100号の会に出す山菜を求めて多摩川の川原を下った。二子多摩川あたりでも、湧水の出ているところがあり、せりやクレソンを見つけることが出来た。野性のせりのあの苦みと香りはスパーマーケットの栽培されものとは比較できない。
 九月の号にも書きましたが、僕の田舎が「芹沼」とう、奈良時代から続く古い地名で、実家から一キロ山に入った所に芹の出るところがあります。雪を割り、摘み取った芹が食卓に並ぶことから春は始まります。小さいときは、どうして大人はこんな苦いものが好きなのか、分からなかった。でも、歳を経るにしたがい、田舎を思い出すにつけ、このほろ苦さと香りが忘れられないものになりました。(M)


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