No72 yoshi-megu-top

猫のグレコ4回忌記念
ムーミン通りのグレコ
「ああ、その父の名は?」
大叙事詩シリーズ好評絶賛待望の新連載ノンフィクション!
怪獣作家
めぐらせんせいかきおろし

 

 ある日、アラパパ企画の大社長めぐらは突然、「猫が足りない!猫を飼う!」とおたけびをあげた。この事務所、唯一の作業員ベーシスト、パパ吉沢はいつものように、あきることなくベースをギコギコならしていたのだが、その手をぱたっと止めて「ねこだって?」とひげをピクつかせて聞き返した。

 「そう!ねこ!ねこが絶対的に不足してる!」         

と確信にみちた声でさけぶめぐら大社長。その帽子の下から天につきでたような、みつあみからは、ところどころ針金がみえかくれしている。めがねときたら、こわいもんなしのトンボめがね特大である。

 作業員パパは「これからツアーも多いことですし、いかがなものか?」と不安気な目を社長にむけているのを知っているのか、全く無視しているのか、大社長めぐらはすぐに猫探しをはじめだした。

 その猫はすぐにみつかった。おそろし山団地のミミおばさんのお宅の飼い猫でそれはそれはみやびな、ブルーペルシャンのおしゃれねこ「サファイア」という名の猫がベランダでどこの猫の骨ともわららぬ乱暴な雄野良猫におそわれてうまれてきたちいさな三毛猫なのだった。鼻の頭のところに黒い三角もようのパッチワークのような柄をみたとき大社長めぐらは「これだあ!」と一発確信したのであった。             

小さいながらき かんきの旺盛そうな目、雌だけどおとこらしいたたずまい。これが、さがしもとめたグレコちゃんでなくて、なんであろうか?というほどのもんである。

 作業員ベーシスト吉沢も、もともと動物はすきなのである。わが子のようなできあいぶり。小さくでもどうどうとあたりを制圧する生まれながらの貫禄に大社長めぐらはぐれこにアラパパの会長に就任していただくことを決定。

 いちばん偉いのはグレコ会長できまり!!!

なんといってもブルーペルシャンの血をひく会長、毛がふさふさでみかたによってはたぬきの様相をみせている。その雅び(?)なお姿とはあいはんして、お食事の好物は高級キャットフード(サーモン、ターキー)などはみむきもせず、いわし缶、かつお缶などのチープなもの。なんと、清貧なわれらが会長グレコちゃん。

 さっそく、「あいよ!」と会長様専用のちいさなドアをつくってすずをつけてくれた、器用な作業員。これで好きなときにそとにいってあそべるってもんだが、なんと責任感のつよい会長はこのムーミン通りの番長とすぐに自覚し角のへいの上から「世はすべてこともなきか?」を目をひからしてなにひとつみのがさない覚悟である。

 しかも父をもとめて3千里という壮大な計画、アラパパ企画の経営ともうけでとどこううりなく近所の猫達もおなかいっぱいたべていけるかがかかっておるのである。

 いそがしい日々がちいさいながらも、すごいスピードでおしよせてきた。のらくら、あそびがちな大社長、一日中、だれにもわからん音楽と言えるのかどうなのかもわからぬベースをやっている作業員の尻をたたいてはたらかせねばならん。まったく、石の猫のようにゆうがに生きてはいられんのじゃ。

 うーん。先がおもいやられるが、たのしいことがいっぱいまっている予感でむねがわくわく、大社長も作業員も責任はみんな会長にまかせて、ますますすきな、なんの役にもたたんことに専念できるという妄想でるんるんきぶん。

 いやはやまったくたのしい日常はとどまえることをしらぬ深みにはまっていく。

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