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      無題
酒井敦
 
 吉沢さんとの出会いについては語りつくせません。相模原のメープルホールで吉沢さん復活のソロを聞いて吉沢さんの色々な旅を教えてくれました。その後に踊らせてもらい、張りきり過ぎた僕はイスからジャンプしてかかとから落ち、骨を折ってしまいました。数月間、足をひきずっていました。ヨーロッパに写真と踊りに出かけた時も痛かったのですが、踊っていたらそのうち治ってしまいました。
 そして吉沢さんがアメリカツアーに出かける前夜に府中病院で口琴を病室で聞かせてくれました。吉沢さんのベースと同じ生命のはかなさ、美しさ、強さを 教えてくれました。
 
 それから散骨の日。弘願寺の清僧さんたちといっしに骨をゴリゴリ砕いて、なめました。骨は塵となって富士のお山に舞いました。きらきらきらきら、宇宙の塵に戻っていきました。そのとたん、僕もはじけました。吉沢さん、本当にありがとうございました。みんな生まれる時も死ぬ時も一人なんだと言うことを最後に教えてくれました。吉沢さんの骨は僕の体に生きています。左足のかかとの骨がちょっと痛む時、吉沢さんも見ててくれるのかなあと思ったりします。
 では、また会いましょう。パパ。
 
(舞踏家・写真家)

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