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夢の中で       




ふと気づくと自分勝手な夢想の中にいる。
それでも随分大人になったと思う。

  考え事をして下りる駅を乗り過ごさなくなったし、
  運転して、道を間違えなくなった。

小さい時からそうであった。
多分に現実逃避の傾向があるのかも知れない。




 私はM銀河の辺境調査員。辺境の銀河の星々の科学調査をしている。正確にはしていた。二五年前あるとき超光速飛行中、バリアの故障を引き起こし、隕石に衝突した。私たちはこの星に不時着したが、調査船は航行不能、僕以外の隊員は死亡してしまった。地球の濃い酸素は、傷ついた僕の肉体が死に至るのは時間の問題であった。残された方法はただ一つ、この肉体を捨て、酸素に強い地球人の肉体に侵入することであった。
 そんなときにたまたま近くを通りかかったのは武藤という地球人であった。僕が説明すると、微かに「いいよ」といったような気がした。本人は言っていないよといい続けているが、それ以来私と武藤君は同じ体に同棲することとなった。悲しいことな私の性格も、彼に似てきたような気がする。
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夢というのは、現実逃避と言うこともあるが、
物事にあたる態度を前向きにするというすばらしい力がある。




 村のはずれにあるお地蔵さんの裏の木の根に「穴」を発見したのは半年前である。初め野鼠の穴かと思って、小さな石ころを入れた。いたずら心が高じて、木の端や土を次から次と入れたのだが、不思議なことに埋まらないのである。だんだん恐くなって逃げ帰ってしまった。
 穴のことは忘れていたのたのだが、少し前、村の子供達がその穴に気づき、 「なんでも飲み込む悪魔の穴」と学校で噂になっているらしいと聞いた。 噂になっているらしいと言うことを聞いた。
 そして今日の朝、TVをつけ驚いてしまった。見慣れた村外れの風景の映像に続き、ワイドショーのレポーターがお地蔵さんの前で「穴」の話しているではないか。
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宝くじにあたったらなど思いついたとする。
次には、もう頭の中はその使い道を一生懸命な考えている。
ぐるぐると一時間二時間と、そのことでいっぱいなのである。



できたら、このまま夢の中に生き続けたいものである。
いつまでもいつまでも。


2005 1/9 Mamoru Muto

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