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     気だるい晩秋



朝まで丸一日降り続いた雨は、南の夏の空気を持って来た。
晩秋とは思えない湿気と暖気は、気だるい午後を演出する。

紅葉の見栄えの良さなどを探しに、外に出たはいいが、
進む山道は、深く入るに従い厚い雲が覆い、気分は益々悪化した。
こんななら、多少でもお日様の出ている、住宅地の方がいい。



風を失い方向性をなくした帆船のような、
無為意味に流れる時間。
ムンクの叫びのような、昔の去のげだるい時間の記憶が蘇る。

青春の日々は、毎日がこんな時間であった。
発狂せぬよう耐えることに、己の全精力を使わざるをえなかった。
そして更に、憂鬱な記憶は後戻りする。
幼い時分、トボトボを歩く道すがら、
低く垂れ込めた雲の下、あてどない空想に耽る、自分までもが蘇った。

2015.11.19 Mamoru Muto
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