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ト ラ ウ マ


四年前に死んだ知り合いの話をしているうちに、
急に海が見たくなり、鹿島の海を見に行った。
その時もこの海に来たことを思い出したからです。
外洋の波は明るく野性的で、再び僕の心に刻まれた。
そして、その年のその後のことが続々と思い出されてきた。


車で有明の展示場に向かう途中、羽田付近で大地震に遭遇した。
帰りは大渋滞とガソリンスタンド営業停止ためのオイル不足。
そしてそれから、
テレビからたれ流れる被災地の報告と原発事故。
すべての予定のキャンセルされ、押し寄せる悲劇の波が重くのしかかった。
暫し忘れるため、街中をあてどなく歩いて気を紛らわすほかなかった。


当時と同じ頃仕事で羽田を車で通った。
グラグラと大地が揺れるのではないかという不安が、
家にたどり着くまで続いた。
そしてこの先、暫くの間、仕事がなくなり、
毎日の身の処し方に苦労するのではないかという不安が、
ことあるごとに心を横切った。


結局、大地の揺れはなかった。
当時と違うことを一つ二つ確認発見するごとに、不安は薄まっていった。

「平凡という名の日常」
強烈な春の嵐を伴い、ゆっくり「いつもの春」を迎えつつある。

2015.3.13 Mamoru Muto

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