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飛 べ な い 夏


熱さに心も気分も沸騰し始め、勝手に空中を飛び回る。
集中とは正反対に拡散、混沌とするばかり。
よからぬ心配ごとが、チクリチクリとアブのように僕を刺し、
その場しのぎの対応するのが精一杯。


いいものは少ない夏の思い出。
川で遊ぶ子供達の歓声をよそに、
川砂遊びに一人で没頭していた幼き頃。
犬に噛まれ、いく針も縫った夏。


今年もやって来た夏。
「ビバァ!夏だ!情熱の季節がやって来た!」と
浮き立ちそうな気配もあったが、すぐに
「あまり多くは望まない。」といつものフレーズ脳裏をかすめ、
自ずと僕の期待は萎んでゆく。


ああっ‼なんと重力は重く、飛べない僕。

思いでの夏も飛んでいなかった。
日比谷の地下30mの工事現場の夏。
九十九里では、酔っ払って、海の底に沈みかけた。


でも、そうだった、西の空を見上げて、
秋になっら、空が澄む分、気持だけでも
空を舞えるかも知れない。
と漠とした希望に自分を託すことにした。


2012.8.11 Mamoru Muto

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