春 の 雨
─ 僕は何処から来て、何処へゆく ─
桜の花も大方散り、公園一面を桜色の花弁が埋め尽くしてしまいました。
いつしか、しとしとと、春の雨が降り出してきました。
木々は芽吹き始め、淡い緑の花をつけています。
僕は何処から来て、何処へゆく。
若い頃の疑問が、亦現れ僕の中を巡っています。
街角を、骨の折れた傘をさした老人が、通り過ぎてゆきます。
歩道に植えられたハナミズキの並木も、花を付け始めました。
雨はそれら全てを濡らし、しっとりと落ち着かせてしまいました。
僕は何処から来て、何処にゆくのでしょうか。
ひとつの季節が終わり、何もない僕に戻って、
亦、同じ問いが現れてきました。
人陰も疎らな、日曜日の午後の街並み。
家々の屋根も、庭の草や木も、アスファルトも、街路樹も、
優しい春の雨に、古い風景写真のようにひっそりとしています。
「そう今度は、こんな安らぎの向こうにゆけば良いかもしれない。」
と、ふと浮かび上がっては来ましたが、
確かな像を結ぶ前に、消えてしまいました。
4/22 2012 Mamoru Muto