↑prev next↓

津  波
 
突然やってきた、絶望が希望を飲み込む三月。
テレビから流れ出る、巨大な破壊の津波。
わたくしも、大津波に押し流れてゆく。
でも、テレビから離れることができない。
身体はボキボキと音をたてて歪み、痛みがそこら中で悲鳴を上げる。


普段は呑まぬ酒を一杯又一杯、酒に呑まれてゆく。
ひび割れてしまった私わたくしの心、
その底から私わたくしの闇が、液状化した泥水となって吹き上げた。


石牟礼道子さんが僕らに心を許し、「死にたか」と切々と話す。
その言葉は私わたくしの中を舞い始めた。
だからいつしか私は、生きることが仕事になった。と
遠き若かりし頃の記憶が蘇り巡る。


友達の自殺が現れ、
更に母まで自殺、義姉までもが、と苦い記憶だけが、
浮かんでは消え、又浮かび飛び回る。


そして今、彼の地で起こっている、
何千何万の絶望が津波となって、覆い被ってきた。


耐えきれなくなり、真夜中の街に彷徨いでた。
「生き抜いてやる!」と声にはならぬ声を叫び上げた。
 
2011 3/23 Mamoru Muto

↑prev next↓