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二 月 光の春の頃


寒さには少し慣れてきた。
風がなければ日向の温かさに、随分と体が楽になり、
午後の温かい時間など、街をウロツクこともできるよになった。

何時になったら、本当の春が来るのでしょうか。
でも今年は特別、春が来るのは遠い気がする。


故郷で、本家の文男アンチャが死んだ。
そうこの季節、雪深い故郷では、弱った年寄りが死ぬ。
僕の多く家族達もそうだった。

二月、
増す光より消える光の悲しみの時と、
僕の心には刻印されてしまっている。


希望と絶望。
光と寒さ。

光の春であるこの二月は、
相反するものがせめぎ合い、結論でないまま、
まどろこしさだけが延々と続く。
そして今年は、殊更長く続きそうな、悪い予感。


二月、春とは名ばかり。
風は冷たく、弱り切った者の命を奪う、死の季節。
耐えなければならなぬ、長き長き「光の春」。

2010 1/30 Mamoru Muto


 田舎の小さい村の親戚が死んで、この季節のぞっとする闇に触れてしまいました。
 若くして死んだ姉から始まり、祖母、父、一ヶ月ほどずれるが母、義姉とみんな僕の家族はこの時期に死んでいます。
 この季節になると体が、何度か氷付くのです。

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