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o悲しい話が飛び込んで来て、何やら骨身に染み込む。
o忘れていた古い物事も浮かび出し、
o鉛の液体となって体中を回り始めてしまった。
oギスギス、体のどこかしこ痛み出す始末である。

o涙を流せるとは、幸せなこと。
o本当に悲しい時は、悲しみそのものがあることさえ拒否する。



oifo
o「もしも」から始まる、
oロマンチックな言葉を重ねるはずだったが、
o12月という季節のなせる、術中にはまってしまった。
o私の心は、重油をかぶった水鳥のごとく、
oバタバタばたつくばかり。もう、飛び上がれない。



o大きな雲が低く空に垂れ込み、枯れ葉がクルクル舞い上がる。
o着込んだつもりだったが、ちょっと長くホームに立っていると、
o肩をすぼめ襟元を固く押さえざるを得なくなってくる。

o息子の不自然な死の顛末を話していた老母は、
o噴き出した涙に話しは中断し、重い沈黙が続いた。
oそしてまた、小さな声で話を続けた。
o遠くに坐った私の耳には、所々しか聞き取れない。
o必死で聞き取れぬ部分をイメージで埋めるのだが、
o細かい部分は分からずじまいである。

o延々と続いた話が終わった時は、すっかり夜も更けていた。
o更に夜風は冷たく、ローカル単線の待ち時間はあまりにも長い。
oもう、関節という関節がガタガタと鳴り始めてきた。



oifo
o果てしなく続く戦争。多くの勢力が入り乱れ、
o何が正義であったかなど、とっくに分からなくなっていた。
o憎悪が憎悪を産み、報復が更なる報復を招く。
oまはや戦闘員と非戦闘員の区別も付かず、
o動くものすべてが敵となり、感覚は完全に麻痺していた。
o私は、ただ「死の安らぎ」を求める戦士となり下がってしまった。

o何やら修羅の幻影の中に、深く深く沈み込んでしまったらしい。

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