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  散骨
英子     
 
去年他界した母の骨を散骨しました。
入れる墓がなかったのです。
父と母は離婚しています。→父と一緒には出来ない。
母の実家の墓にも入れられない。
新設するか?→墓守は誰?
兄は父の墓守をしているし、北海道に墓をつくられても私達が墓参りにいけない。
姉のところには子どもがいない。
私のところだって、この先は、甚だあやしい。
近い将来、無縁仏になって合同に祭られてしまうのでは申し訳ない。
それに、自然に近いかたちで送りたかった。
もうひとつ、人口が多く、活用できる土地の少ない現在の日本で、死者がある程度の土地を専有してしまうのはおかしい。これは姉と私の共通の意見です。
母の気に入るような土地を持った知り合いがいたらよかったのですが
心あたりがなかったので、散骨をする団体にお世話になりました。
趣旨が一番近く、費用も安いところです。
空・海・陸があります。
陸にしました。
花や野菜を育てるのが好きだった母を、土に還したかったのです。
母も落ち着くと思います。
趣旨に賛同して土地を提供してくださるいくつかの場所から選び申し込みします。
当日は、案内の方と事務局の方と現地のドライバーの方と3人もご一緒してくださいました。
土地を提供してくださる方もとてもいい感じでした。
事前に骨を粉砕しておきます。
自分で砕いてもいいのですが、私達は業者に頼みました。
業者さんは骨壺も処理してくださいます。
紙袋に入って戻ってきたそれは、きれいでした。
私のイメージでは、袋ごとざばざばと撒く。でしたが、ささやかながらも荘厳にすべきだったようです。
案内人が簡単に送る言葉をかけて、黙とうして終りました。
私は少し、しらけていました。
案内人も、去年ご両親を自然葬(この団体ではそう呼ぶ)されたそうです。
思い出されてしまったようで、困りました。
私達はすっかり気持ちが済んでいます。
何かうっとうしい思いを持ち帰ってしまったので、団体のHPをみました。
団体探しから決定まで姉に任せきりだったので、よく知ろうとしていませんでした。
HPで確認しました。団体の趣旨はいい。ただ、利用する人の意識が追いついてないのです。
会報には感想文が載っています。ことがことだけに、文章が思いいれたっぷりです。
そして、自然葬にしてよかった旨が書き手が自分に言い聞かせるために綴られているようです。口では自然葬がいい。または、本当にそう思っていても、外野に惑わされて気持ちが揺れている人が多いようです。墓に入れない・墓をもたないことを理想としても、気持ちが揺れる要因がいろいろあるのが現在です。
何事もこんなズレがあります。
散骨した日の晩、激しい雨が降りました。
こんなに激しければ、どんどん流されて、土に混じって、早く還ることができると思いました。
恵みの雨です。
 

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