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    中皇命なかつすめらみこと、紀の温泉 に往いでましし時の御歌

わが背子は 假廬かりほ作らす 草かや無くは

                  小松が下の 草を刈らさね 



    有間皇子ありまのみこ、自みづから傷いたみて 松が枝を結ぶ歌二首

磐代いはしろの 浜松が枝を 引き結び

                  眞幸まさきくあらば また還り見む


卷向の 桧原ひはらもいまだ 雲居ねば

                  小松が末うれゆ 沫雪あわゆき流る


(柿本人麻呂歌集より)
 
 
 
 
  羽衣伝説(能「羽衣」より)

  その昔、三保の松原のとある松の枝に美しい衣が掛かっていました。
  漁師の伯梁がそれをとって帰ろうとすると、どこからともなく天女が現れ「それは私のものだから返してほしい」と願います。
  それならばなおさら返すわけにはいかないという伯梁に、天女は天に帰ることができないと嘆き悲しみます。
  それを見て哀れに思った伯梁が天人の舞を見せてくれることを条件に羽衣を返すと、天女は喜んで伯梁のために舞をまって見せました。そして、まいながら霞の彼方に消えていきました。
 
 
 
  あかまつ(めまつ) Pinus densiflora sieb. et Zucc. 〔まつ料〕

 南は九州がら、北は北海道の南部まで広く我国に分布している常緑の高木。山野に最も普通に自生している。又植林も多く見られる。幹は直立し、主なる枝は車輪状に枝分れをし、その枝り上に、更に小さな枝が多く出る。葉も密に茂る。大きいものでは高さ40m、直径1.5m以上にもなる。上部の樹皮は赤褐色。下部では暗褐色でべつ甲状の裂け目が入る。葉は緑色で、2本が対になって双生し、その基部は褐色の膜状のさやにかこまれている。葉の形は細長い針状で葉質は軟かい。その横断画は半円形、維管束は2個、樹脂道は数個で葉辺に接している。雌堆同株。4月に新しぺ枝の項上に2~3個の紫色の雌花をつける。種鱗には2胚珠がある。その下部に楕円状の雄花を群生する。包鱗には、2個のやく室があり、無数の黄色花粉を出す。球果は木質で硬く、卵状円錐形、長さは4~6cm。直径は3cm位ある。種鱗は卵状長楕円形で先端の面は菱形か又は不斉五角形をしていて中心にへそがある。種子は倒卵形で長さは5mm、約3倍の長さの皮針形の翼がある。材は建築、器具、土木などに用いられ、又松脂をとりテレピソ油の原料となる。いろいろの変種がある。
 〔日本名〕幹が赤褐色をしていることからきている。〔漢名〕赤松というのば誤りで、日本のマツは支郡にはない。
-牧野植物図鑑-




 門松ということで松にしました。松の新芽がすっと伸びたものが一番好きです。宮本常一の本に松は、「新芽を先から二三本だし、次の年にその先から出すので、節を数えれば樹齢が分かる。」と書いてあったのでやってみると、十年ぐらいまでならよく分かります。日本では松にかかった羽衣が有名ですが、この羽衣伝説は、東南アジアから日本にかけてたくさんあります。天女と地上の男の恋物語であったり、内容も様々です。僕の好きな民話です。(まもる) 

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