背景に使ったのは日高町の巾着田で群生する曼珠沙華      No97 / prev top next















つきぬけて天上の 紺曼珠沙華     山口誓詞




ゆらゆらと回想のぼるまんじゅしゃげ 榊原風伯




朝潮がどっと負けます曼珠沙華   坪内稔典




曼珠沙華人ごゑに影なかりけり   廣瀬直人






   






うすづくける彼岸秋陽に狐ばな   赤々そまりここはどこのみち


春く(うすづく)は、夕日が山の端に入ろうとする、の意 誰の歌かわからないが、真っ赤な夕日に照らされた真っ赤な曼珠沙華。あの世に迷い込んでしまったのかもしれない。
 昔この球根を晒し解毒し飢饉の時食べたとか。また、モグラが食べて死ぬのでモグラよけに植えられたという。南の植物で中国経由で持ち込まれた。日本では種をつけないので、球根で増やすという。僕の田舎になかったのもうなずける。






















 ひがんぱな  (まんじゅしゃげ)    Lycoris radiata Herb.         〔ひがんばな料〕


 堤防、路傍、墓地等の人気(ひとけ)のわるところに多くはえる多年生草本。ラッキョウ型の鱗茎が地下にあり、外皮は黒い。秋のまだ葉が無い時に鱗茎から30cm内外の茎を1本出し、その先に有柄の赤色の美しい花が数個輪状に開き下に膜質の包葉があり、これは始めつぽみを包んでいる。花被は6片で組長く外側に反り、へりはひどくちじれている。雄しぺ6本と雌しべが長く出て、花被と同色である。子房は下位で緑色、成熟しないので、種子はできない。花後に深緑色の葉を多く群生し、線形をした鈍頭で、葉質はやや厚く光沢があって、やわらかい。葉は翌年3月頃に枯れる。有毒植物の一種であるが、この鱗茎をさらしてでん粉をとり食用にすることがある。地方の俗名が多く50余の方言がある。
〔日本名〕彼岸花は秋の彼岸頃に花が咲くのにより、マノジュシャゲ(曼珠沙華)は赤花を表わす梵語によるものである。しかしそのもとは葉が出ない内にまず花を咲かせる意味で、先ず咲き、または真っ先が仏教との関係で上記の文宇があてられたものであろうか。
-牧野植物図鑑-






  この花を知ったのは東京に出てきてからである。田舎の会津にはなかった。でも名前だけで野に咲くこの花を知ったのはこちらに引っ越してからである。表紙の編集を終えてから、このコーナーで扱っていないことに気付いた。
  秋の初めに突然真っ赤な花だけを地上に現す。この異邦性はこの世とあの世の境に咲く花というのもうなずける。初夏に彩度の高い様々な色で咲き乱れるヒナケシを思い出す。芥子の仲間だから麻薬成分を含んでいる点など、現うつつ を超えた夢の世界に誘ってくれそうで好きな花である。(まもる)


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