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         六月の雨
   六月の雨はしとしとと
   何もかも、優しく包み込む。

     山々の緑や木々や路傍の草々に、
     あなた達がこの世界の主役だと
           静かに語りかける。


     けたたましい騒音を上げて走るトラックや、
     崩された山肌や工事現場の煩雑なものたちも、
     煙る風景の中では、違和無く感じさせてしまうのは、
     雨のなせる魔法としか言いようがない。


     突然知らされた悲しみの知らせ。
     その驚きの何分の一かを
       「なるほど」という言葉にすりかえてしまのは、
          この季節のなせる不思議な技である。

 
   あめ、今日も雨。
     浮ついた気持ちが、しっとりと鎮むのは良いことだが、
     沈み込んだ心が体調の悪化まで及ぶのはちときつい。

   でも、春と夏の間に配置されたこの季節は、
     この地方、温帯モンスーンで生きる全てのものへ、
       天から下された贈り物なのだろう。

   そして僕は、過去の大きな事故や病気の記憶と重なり、
     いつしかこの時期は心静かに過ごすことが、
       一番得策だと、骨身に染みついてしまった。
6/13 '05 Mamoru Muto

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