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背高泡立草

セイタカアワダチソウ

        

      

 

おおあわだちそう Solidago serotina Ait.   〔きく科〕

 北アメリカ原産の多年草。茎は高さ1m内外で直立し、円柱形、毛はあるが脱落しやすく、花軸にだけは多い。葉は多数で互生し、皮針形でとがり、ヘり、とくに先半分にきょ歯があって先端も基部もとがり、無柄、明瞭な3本の主脈があり、質はやや硬い。夏から秋にかけて茎先に黄色の頭花が多数咲き、頭花は茎頂や上部葉腋から出る花枝に穂状に着く。周辺に舌状花があり、内側には浅く5裂する筒状花がときおり舌状の傾向をともない、そう果には冠毛がある。明治年問(19世紀後半)に観賞品として日本に渡来し、庭にも植えられるが、地下枝でさかんに繁殖するので、今では雑草化している。しがし草丈の高いカナダノアキノキリソソウ S.canadensis.L.やセイタカアワダチソウS.altissima.L.(いずれも北アメリカ産)が雑草としてはより強力で、しばしば群生する。
 〔日本名〕アワダチソウ(アキノキリンソウ)に似て大形であるのにちなむ。本属は主に北アメリカに産しGolddenrodの名で知られる。           

-牧野植物図鑑-

 


 

  「日本原産の野草が全部やられてしまうんだよ。とにかく強く、大変なんだよ。」と農大の学生だった真板氏が悲鳴のように叫んだ。水俣病患者支援の東京の事務所のリーダー役だった彼の専門は植物学である。この外来種の黄色い花を見るたびにその頃のことを思い出す。

 1970年前後、水俣患者支援に集まっていたのは学生運動に疑問を感じた活動家崩れから社会派とはまったく思えない人まで多種多様で、どこに行っていいか分からない人の溜まりでさえあった。街頭カンパやビラ配りやチッソへの抗議行動の合間に自分の興味の話などだらだらと話し合ったりしていた。泥鰌の話なら顔が変わってしまう東京水産大の学生、ロシア文学ことならなんでも知っていた田尻さん、津田塾の強くてきれいなお姉様方と。僕もそんなイデオロギーとかあまり言わない集団だったからこそ身を置くことができた。

 その後、ゴミの世界と言うか、排泄物の世界というか、東京湾の埋立地が好きになりよく遊びに行っていた。有明は砂ぼこりの舞う荒野だったし、新木場の先や13号埋立地は紙やビニールが飛び交っていた。それは科学文明品というもので武装し、コンクリートの狭い空間にへばりついて生きてゆかざるを得ない現代人の悲しいサガが映し出された真の姿がそこにはあっる様な気がして、僕には一番落ち着付ける場所だった。

 そして、僕はこのゴミの世界でもたくましく生きるいわゆる雑草の力強さに、時に落ち込んだ心は救われた。勿論その雑草の筆頭にこのセイダカアワダチ草がいたのです。真板氏が心配していた日本の荒れ地をこの草が埋め尽くすと言うことにはならず、従来の日本の固有種や茅や葛などの草が勢力を盛り返して、この草の拡大が止まり、今はバランスが取れてきたと聞いています。しかし一時は大問題だったのです。

 それにつけても、生態系とはすごく摩訶不思議な世界です。自然には絶対強者と言うのは存在しないのです。「西洋タンポポ」もそうです。一時は日本タンポポが絶滅するのではないかといわれていたけど、決してそうならかったない。絶妙なバランスをつくるのですね。「人間はほかの動植物と違う」などと思い上がってはいけない。人間もほかの動植物なしでは一日も生きてゆけない、地球生態系のただ一構成員に過ぎない。

(まもる)

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