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 家紋

    


 

すてゝある石臼薄し桐の華      鶴声 (元禄期の俳人)

 

熊野路に知る人もちぬ桐の花       去来

 

桐の花咲くや都の古屋敷       正岡子規

 

臼の上に 鶏とまる 桐の花      高浜虚子

 


      

 

 きり       〔ごまのはぐさ料〕

    Paulownia tomentosa Steudel   

 日本各地に広く栽培される落葉高木である。幹は高さ10mほどとなる。葉は対生し、長い柄をもち、広卵形で先がとがり、全縁または浅く3~5裂し、基部心臓形、長さ20~30cm、全面に粘りけのある毛が密生する。初夏、枝の頂きに円すい形の大形の花序をつけ、多数の紫色の花を開く。がくは5裂し質厚く、黄褐色の毛が密生する。花冠は大形で筒となり、先は5裂して唇形となり、長さ5~6cm、淡紫色で内面に黄色の条がある。2本づつ長さの異る4本の雄しべをもつ。果実は大きな卵形のさく果で先はとがり、長さ3~4cm、2室にわかれていて、熟すと2片にわれて多数の種子を散らす。種子ば膜質の翼がある。材は柔らかく軽いので下駄、家具などに広く用いられる。朝鮮の欝陵島や北九州の山地に野生状態でみられるが原産地ははっきりしない。この木をきればすみやかに芽をだして生長が早いのでキリの名があるという。漢名として白桐を用いるが誤りである。

-牧野植物図鑑-




 

 僕の田舎の会津は桐製品の産地で、家の庭先や休耕している畑などに桐が植えらている。初夏の咲く花の紫や大きな桐の下で遊んだことなどは懐かしい記憶である。小学校に行く通学路に下駄の工場があり、長方形に大きさに裁断した桐材をドーム上に高く積み上げ、野ざらしで乾燥させるための塔が、何本も立ちかっこうの目印となっていた。桐の箪笥タンスは結婚する娘に持たせてやる必需品でさえある。
 今回図鑑を見て、桐の仲間は「木」でなく「草」が多いことを知った。「木」になってから植物学的に歴史が浅いのかも知れない。                                                  (まもる)

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