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    -お水・吉田君より昨年の暮れに届いた、

            『はじめのいっ穂』と名付けられた新米に同封されていた文章です。

 

この春、埼玉県の毛呂山町にちいさな田んぼを借りました。

去年までは畑だった場所なので

まず、畔を作りました。

次に田んぼの一部に苗代をつくり

そこに、5千粒ほどの種をきれいに並べて蒔きました。

一粒の種が一本の苗になりました。

梅雨に入る少し前、

その苗を一本ずつ田んぼに植えました。

稲が膝ほどの高さになった時

沢山の青虫が稲の葉を食べ始めました。(悲しくなりました。)

夏を迎える頃、稲の根元に大きな斑点が見つかり

その病気はあっという間に田んぼじゅうの稲に広がりました。(不安になりました。)

それでも、旧盆の時分になると

細く尖った葉っぱの中に緑の穂が生まれ

その穂の周りに小さな白い花が咲き

うるさいほどの蜂の羽音が田んぼを包み込みました。(天国のようでした。)

夏が終わりにさしかかると十万本の稲穂がお辞儀をしたようなので

私達も慌てて頭を下げました。

だって、お礼を言うのは此方の方ですし

何も出来なかったことをお詫びしたい位なのですから。

『本当に何と申して良いのやら、

 こちらこそ大変お世話になりました。

 それに、田んぼが棲家の小さな生き物たちに

 鎌北湖から流れてくる水と

 遠く空から照らしてくれたお日様にも

 何と申して良いのやら

 大変、大変お世話になりました。』

私達はペコペコ頭を下げるばかり、

そんな小さな『はじめのいっ穂』です。

                 (『エッサホイサ農本日記』より)

        

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