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蕗の薹




蕗の薹 おもひおもひの 夕汽笛

中村汀女




ふ    き 〔きく科〕
Petasites japonicus Miq.

本州,四国,九州,琉球(野生化?),朝鮮および支那の山地や平野の道端にはえる雌雄異株の多年草,根茎は非常に短かくて地上には出ず,周囲に地中枝を出す.葉は花後に根出し,葉柄は多肉質で非常に長く,その先に円状じん臓形の葉身がおる.葉身はうすく幅15~30cm,灰白色の綿毛がある.早春に根茎から花茎を出し,大形の鱗状包を多数つけ,次第に花茎が伸びて,雌株では花後長さ約30cmになる.雄花は白黄色,雌花は白色,ともに冠毛かある.葉柄 および若い花茎(これをフキノトウという)を食用または薬用とする.本州北部,北海道,樺太.中南千島などには,全体大形で葉柄は長さ約2m,葉身は径1.5mにもなる変種アキタブキかあり,栽培もされる.〔漢名〕一般に蕗,□冬などとしているが誤りである.

-牧野植物図鑑-

               

 

 

インターネットで万葉の草木を調べてみたけど、蕗の薹いい記事や歌がない。同じく小林一茶にもいい句がない。どうもこの江戸時代まではいい詩的、美的素材にはならなかったらしい。春の七草ではないが、早春の菜として古代の人も盛んに蕗の薹を摘んだに違いないし薬草として珍重されていただろうと思うがちっとがっかりしていたら、ラジオで元は「冬吹き草」と言っていたという。なんとすてきなネーミングでしょうか。冬を吹き飛ばし春を告げる草。昔の人のこの植物に寄せる思いが伝わって来る。
 天ぷら、おしたし、などほろ苦くて早春の山菜として欠かせない。そんな中で「蕗みそ」はおいしい。作り方は、蕗の薹をみじん切りにしてそのままみそとみりんであえるだけ、「苦み」を食べるといっても過言ではない。是非試してみてください。



蕗のとう 猫と日向を 分け合えり

蕗のとう 富士背に春 ひとりじめ 
   

まもる         . 

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