1280×720pxで編集 
 背景:せせらぎ
   遁   走

長い梅雨が明け、強烈な夏の暑さがやって来た。
毎年行く、五日市の奥、養沢渓谷に向かった。
谷川のほとりに簡易ベッドを広げ、
身を横たえ、せせらぎの音を聞く。
僕の夏の至福の時である。

長い梅雨で豊富に蓄えられ、水量は豊富である。
流れは激しく、随所に白いしぶきを上げ、
軽やかな音を奏でている。
夏の太陽は、高い木々の葉を、
明るい緑色に染める。
その幾ばくかは木漏れ日となり、
枯葉で敷き詰められた地面を、
まだらな縞模様で飾る、

本も持ち込んだが、せせらぎの音を楽しむので、
心は満たされ、本を広げようとは思わない。

もう、何しなくて良い。
森を抜け、水辺を渡った風が、
肌の火照りを冷やし、去っていった。
2019.8.9 Mamoru Muto