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「 毛 沢 東 」  日本軍と共謀した男   遠藤誉 著  新潮新書


 様々な場面で日本と中国の対立が先鋭化しています。是非この本を読んでみてください。中国の反日の根拠が失われてしまうのです。
 
 中国の共産党革命前夜、延安に逃げ込んだ毛沢東一派が、数年の内に国民党と対抗できる勢力に拡大出来たのは何故か。現代史の学者の疑問でした。毛沢東と日本政府は内通していたのではないかというのが、その疑問の答えという推論なのですが、その証拠が見つからなかったのです。
 この本の著者は丹念に日本側の記録を探し、その根拠となる資料を探し当てたのです。
 
 上海の日本政府の出先機関に、毛沢東のスパイが潜入して、日本軍の情報を集めていた。という言うのか従来の解釈だったのですが、実は、彼は毛沢東の腹心で、国共合作により得た、国民党軍の情報を日本側に渡していたのです。日本軍の矛先が八路軍に向かないようにする、毛沢東は内通し工作していたわけです。それ故に毛沢東は全精力を党勢拡大に向けることが出来たのです。
 共産党は二枚舌、形だけの反日戦争をしていたことが、証明されたことになります。
 
 生前、毛沢東は日本軍を非難することは一度もありませんでした。日本からの使節団に何度も、革命の成功は日本軍のお陰でと述べています。しかし共産党の正式見解は「日本軍と戦った。」です。戦わなかった事実を隠蔽した訳です。しかし時代が移り、当時のことを知らない人物が最高指導部に就くようになり、初めて反日キャンペーンが生まれたのです。
 
 中国が貧しい国であるうちは、貧しい人々の味方という、共産党の大義名分がありました。豊かになるに従い、その大義名分が揺らぎ始めると、「日本軍と戦った、唯一の勢力」という新たな存続根拠を持ち出してきた訳ですが、これは歴史のねつ造です。更に最近、反日デモが暴徒化したり、反政府デモへの変質が見られるようになる、デモ禁止をせざるを得なくなりました。今度は「中国夢」と言った中華思想への回帰を持ち出し、共産党存続の延命を画策している訳です。今、反日の根拠を失うことは、共産党存続の根拠を失うことに等しいのです。
 
 この本は過去の歴史問題ではなく、今後の中国の内外の政治に、大きな影響を与えるものと思われます。

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