乱蘭通信160号・思い出すまま   ↑prev next↓

 中国 農村について
 九億の農村籍と四億の都市籍。農村籍である農工民は出稼ぎで都会に出ても、都市の公共サービスは受けられない。同じ仕事でも賃金に格差がある。また、故郷の農村の自然は、かっては飲み水に事欠かなかったものが、今や水道水ですら汚染物質が混入し、水を購入することが当たり前となってしまった。都会から押し寄せる商品経済は貧しい農民を苦しめることになり、出稼ぎしなければ生活できなくなるわけです。そして都会を追われた汚染企業が、田舎の河川を汚染させているのです。
 以前は有機肥料のみだった農地は、化学肥料と農薬の導入で地味がやせ、農薬に耐性を獲得した害虫に急に悩ませられることになります。
 土地の私有権が認められていない中国では地方政府が決定すれば、土地収用は安い使用権売買でなされます。リーマンショック以降、地方開発という名目で大規模な土地収用がなされインフラ整備のみならず、都会の富裕層の為の土地開発と変容し、不動産、建設、そして地方政府を潤わした空前の不動産バブルを引き起こしました。しかし土地を取り上げられた農民には使用権という少額しかし払われず、また、農民には必要のない公共施設や住宅地の乱立となり、益々格差を広げる結果に終わったのです。
 
 改革開放政策以前は貧しくとも平等であったのが、今や都会生活者と農民とでは桁違いの格差が生まれた。現代の中国はかって一度は否定した身分社会なのです。都市住民が反政府運動をしない理由は、彼らが一党独裁の特権階層に属しているからです。
 最近中国各地に毛沢東の巨大オブジェが設立され話題を呼んでいる。現政権を表立って批判できない農民のささやかな意思表示でもあるのです。
 
 昨年の秋、習政権はこの格差社会の是正を今後の重大政策の一つにあげた。敗撲滅運動はこれ以上は中の社会の構造的問題であり、民主化しなければ改善しません。どの程度格差、貧困問題に取り組めるかが、今後の国民の評価の基準となるでしょう。
 現在の中国の田舎のニュースを見るにつけ、公害列島と化した日本の60、70年代の日本の農村と重なり胸が痛くなります。
 
 今後の中国がどうなっるのか、世界の中国ウオッチャーの意見は分かれる。経済減速と共に農民などの下層民の暴動が起きる。という見方と、経済減速を上手くコントロールし、破綻せずに低成長経済に導くことに成功する。というみ見方です。中国の場合、情報が着色され正確さを書くので、どうにでも予想されるのです。貧困層を見る限り、破綻し再出発するすべきであると思われます。


  1月下旬、グランドでゲートボールに興じる老人達。
1月中半から例年通りの寒さになって雪も降ったが、
今年は暖冬です。
 みかん畑、水俣での記憶
 中国の農村を調べていて、昔の水俣のみかん畑を思い出した。70年代初め、水俣病の患者さんのみかん畑は手入れが行き届かず、荒れ放題だった。僕ら支援の若い者はチームを作り草刈りなどの作業を手伝った。
 熊本芦北地方は丸田印の甘夏みかんの産地だった。健康な働き手のいる隣のみかん畑は、よく手入れされ、草一つ生えていない。除草剤を使って草を枯らしていたのです。
 その一方患者の畑は草や蔓植物が伸び放題、その中にみかんの木があるような状態だったのです。そして、店頭に並ぶ丸田みかんは、均一なきれいな形をしているのですが、患者さんのみかん山のみかんは、形はいびつ、ごつごつした、整った綺麗さは全くありません。しかしみかんの味を比べてみると、荒れ放題のみかんの方が甘みも酸味も強く、美味しいのです。これを有機みかんとして売ろうという企画が持ち上がり、つてのある市民運動関係者に広まり、全国に広まったのです。自然食運動が水俣病の地から始まったのです。
 
 草一つ生えない畑を当時の人は何も不思議に思わなかった。それこそが文明の力とさえ思っていたのです。現在の中国の農地の現状と同じです。伝わってくる報道はニュースになる部分なので、目に付くことしか伝わってこないのかも知れませんが、日本の農村は農薬まみれだったが手入れはされていたのですが、今の中国の農地はもっと荒れているような印象を受ける。
 
 僕らが手入れの行き届かない畑から、有機無農薬作物という価値を見出したようなことを、中国の農村から聞きたいのですがね。
 
 愚民政策
 国民に必要な情報を与えない。政府や党に関する不利な情報は表に出さない。早めにインターネット、マスコミ上から削除する。共産党以外の組織を認めない。国民の意識を、教育マスコミにより誘導する。これらすべて民衆をバカにした政策です。
 現在中国政府やろうとしているのは、インターネットのコントロールのさらに上、コンピュータシステムを馳駆した、高度なコントロールシステムです。インターネットによる完全支配です。
 インターネットは中心を作らないことにより、冷戦時の核攻撃対応軍事通信網として生まれた。中心なくおのおのがシステムの中心であることは、誰にも全体をコントロールできないシステムととして、民主主義の象徴的システムとなったのです。それを中国政府は、高度民衆コントロールシステムへと再編しようしているのです。インターネツトの発展に逆行する発想です。SFのコンピューターによる人間支配の世界です。こんなシステムを世界に輸出されては迷惑千万なのです。
 
 台湾の選挙
 1/16に行われた台湾の選挙で民進党が圧勝した。総統のみならず議会でも民進党が過半数を占め、安定した民進党政権が成立することになります。経済成長で得た資金を武器に一路一帯構想、AIIB設立と世界戦略を進めようとしている習政権にとり、足下からノウを突きつけられたわけで大きな痛手です。
 国民党政権の中国よりの政策に台湾の学生は一体化拒否の運動を展開してきました。その運動の結果が今回の選挙です。これは香港やマカオの民主化運動に大きな影響を与えるものと思われます。
 昨年の夏、上海株価暴落に中国政府は市場の意味をなくすほどの市場介入おない株価の安定に努めたのも、一経済政策の失敗が政府批判につながり、その暴動と民主化運動が繋がった時、一党支配が終わる時だからだからです。いくら中国政府が情報を遮断しても、じわじわと、自由化と民主化は浸透してゆくものと思われます。
 
 「時代力量」というひまわり学生運動の流れをくむ政党が、5議席獲得したことはとても大きいような気がします。彼らは民進党以上に中国政府に明確にNOと主張している訳で、議員活動というより、これからも若者の大衆運動をリードして行く訳で、同世代の共産党政権下の若者への影響は計り知れないと思います。それは日本の若者へも大きな影響を与えると思います。
 台湾、大陸双方の若者の動向を、今後気を付けて見て行かないといけない。
 
 
 申年の東アジア
 安倍政権が出来て三年、韓国は同じ頃朴政権に変わり、中国も習政権に代わった。共通していることは、二世三世の政治家で、古い価値観を大切にする政権である。ということです。安倍政権は大幅な金融緩和による景気浮揚、本命の安全保障法案の成立。中国は腐敗防止運動と経済再編と保守的イデオロギーによる再統一。朴政権も古い価値観による引き締め。しかし三年経ち国民に人気のあった政策にも色褪せ始め、保守である意義が問われ始めています。長い目で見た時、今年は東アジアの政治が変わる節目になるかも知れません。
 
 そこで巨大な人口と経済を保持する中国の動向が一番注目される訳です。「中進国の罠」途上国がそのまま先進国にはなれず、国内調整の期間が必要ということに入った中国が、政治改革まで進むのかどうか。民主主義を鮮明にした台湾の存在は今後の中台関係のみならず、周辺諸国の政治的動向に象徴的な出来事です。今年は更に鮮明に見えてする様な気がします。
 このまま共産党の経済運営が成功しても、TPPを始めとした中国包囲網が強固になるでしょうし、政治的対立は継続するでしょうし、政治改革の必要さが明確になれば、更なる混乱を覚悟しなければならないと思います。また、中国経済の減速は次の経済大国、インドやミャンマー、インドネシアの台頭を求める様になるでしょう。
 いずれ世界を巻き込んだ、経済、政治の再編が始まるのです。


  2月上旬、福生神明社の梅。

 計画経済の終焉
 韓国の朴軍事政権のように、開発独裁という言葉があります。ある程度の経済規模までは、独裁政権の方がやり易いということです。しかしそれ以降は、経済の自由化のみならず、政治の自由化が必要になります。中国の抱える根本的問題はここにあります。
 中国政府が腐敗防止キャンペーンをやっても、経済の意思決定の仕組みが代わらなけば、腐敗無くせません。半自由と計画経済との中で、非合理なものを再生産しているというのが、現在の中国経済です。
 
 例えば土地バブル、本来なら銀行が主体になり、必要な住宅建設に資金を供給するのですが、銀行が政府の管理下あり、十分資金を供給できないので、高利のヤミ金融がはびこる。一部のヤミ金融のみならず、大手な不動産会社、地方政府まで率先してヤミ金融にてを出す。バブルをが崩壊して、土地開発が必要なくなっても、大手の企業や地方政府が膨大な不良債権を抱えて損失を出すので、中央政府は土地開発に資金を出し続ける。といった具合です。
 
 不動産の自由市場に任せ、不動産価格が下落に伴う不良債権は、損失として処理するのが、本来の姿です。それが出来ない。一党独裁が絶対死守なので、一時的にせよ、不良債権処理に伴う大量の失業者が、政府批判に回るのを避けたいがための方策だかです。
 自由市場の需要と供給のメカニズムが機能していないからです。市場を管理しようという政府の意図は皆裏目にでることになります。恐らく、政府が今まで貯め込んだ資金が尽きるまで続くでしょう。それが出来なくなった時、一党独裁の中国は崩壊するのです。
 
 
 円高
 世界情勢が不安定になると、外為市場は円高に振れる。今年に入り、サウジがイランに国交断絶を通告したり、上海の株価が値下がりしたりすると、日本の株価も連動し値下がりするのですが、円は高くなります。リーマンショックまでは、政情不安にはドル高だったのですが、アメリカの経済が混乱していだので、円のみが高くなることになったのです。
 1000兆円を超える財政赤字を抱える国の経済を、外為相場は財政赤字を無視しているとこになります。日本は経済に関しては優等生と見ているからです。それはどうしてなのでしょうか。日本の財政赤字は赤字ではないからです。それに見合うものを日本政府が保有しているからです。約500兆円程度は、債権という形で、外国に保有しています。アメリカの国債だったり、手堅い金融商品としてです。また、国内には国有地として、都会の一等地に土地を所有していたりします。それらを総合すると、1000兆円程度になるのです。これだけな政府資産を持っている国は他にありません。ギリシャのように、日本を財政赤字国家と世界の金融関係者は認めていないのです。
 
 日本政府と財務省が事あるごとに、財政赤字と宣伝しているのです。勿論これらの資金は戦争や大規模災害などの予備財源として必要です。それにしても膨大過ぎます。
 低減税率を10%から8%に据え置くのに、つまらない議論を延々とやっている。生活に直結するものは、0%の税率にするのが当たり前でしょう。財源は膨大な海外資産をほんの少し使えば良いだけです。
 政府やマスコミの言うことに騙されないようにしなくてはなりません。この資産は言わば役人達の権威の象徴、実質的な使用権を持つ役人達の権力の源です。これを武器に彼らは政治家達を政策を誘導し、コントロールしてきたのです。
 民主党など政権担当の浅い政党など、役人達の力をからすれば、上手く言いくるめることができるということでしょう。彼等に財政赤字の危機感毎日解き、まんまと消費税アップに成功したわけです。この役人の壁を破るのは並み大抵ではありません。
 役人が言うようにこれらの資金が日本経済を安定させていることは確かですが、メスを入れることの出来るのは、役人達迎合している保守政権ではダメで、安定した革新政権の誕生しなければならないと思います。
 


  暮れのお蕎麦の会で余った大根。乾燥したら三週間で
こんな姿になった。煮物に使ったらなかなかの美味。

 近江商人、「三方良し」の哲学
 すし太郎、ソマリア沖の海賊撃退。とか一月下旬のマスコミを騒がした。すし太郎の社長が2012年頃からソマリアに船と漁師を派遣して、海賊行為する漁師たちに、マグロ漁を勧め、獲れたマグロは日本に輸出するプロジェクトが功を奏し、昨年はソマリア沖の海賊行為がゼロになった。
 勿論これだけで海賊が居なくなった訳ではない。各国が軍艦を派遣し警備が厳重になったのが一番の理由です。また漁師たちが生活に困れば、海賊に変身する可能性は、十分にあります。この地区に安定政権が樹立し、海岸線開発をしなければいつでも元に戻るのです。それこそ国際政治為すべきことです。
 
 かっての近江商人は売り手買い手のみならず、世間様も良しの三方良しのてつかつを持っていた。「win、win」の哲学はよく言われる。商売はそれだけでは十分ではないのだろと思います。さらに広い世界、社会に及ぼす影響も加味した時本当の商売と言えるのだと思います。
 危険な海賊達の中に分け入り、そこに利益を与え、ソマリアの漁師、日本の消費者、国際社会に利益をもたらした行為は、商人の鑑といって良いでしょう。
 
 軍隊を派遣するより、民生安定のソフトプロジェクトが如何に大切かということですし、お金では無く、より具体的な、技術者、現地の実情に合った細かい計画が必要ということです。
 これを契機にソマリア海岸開発プロジェクトなんか立ち上がらないですかね。漁港を整備し、乱獲しない漁法を伝授しる。何も大金は必要ない中古の漁船や漁港設備。海岸線が長いし、日本よりヨーロッパに近いのですから、海産物商品として利益が期待できる工場まで作れたら一大産業化も夢ではありません。
 
 爆買いツーア
 旧暦の正月、春節休みに来日した中国人観光客の爆買いが今年もニュースになった。でも、旅行の目的が徐々に代わり、通り一遍から、各人の様々な興味へと多様化し始めているようです。必然の流れでいい事です。ただこの爆買いが、中国にないものや高級品なら分かるのですが、中国でも売っている日用品となると、考えざるを得ない。中国人が自国の製品を信じていないからです。
 
 大量に旅行者が日本に来るようになり、日本の空気の良さ、綺麗な街並み、清潔なトイレ、丁寧な接客などに感動して帰ってゆき、そして口コミやメールで急速に中国国内に広まりつつあると言います。中国人にとりアメリカやヨーロッパの真似より、生活習慣の近い日本の方が真似しやすいのです。それらは中国国内に日本ブランドという日本のものを受け入れる素地を作る訳です。時には顰蹙をかう旅行者に親切に対応していて、けして損にはなっていないのです。
 
 何年か前、中国政府が日本のAVを一部解禁にして、中国の若者達にAV女優がアイドル化し、日本の芸能界そのものと誤解しました。政府の反日報道も然りで、部分的報道は大きな誤解を生みます。その点、旅行はありのままの日本に接する訳で、あっという間に誤解を解消してくれます。
 
 かって、日本にやってきたアメリカ軍、女性や子供に優しく、よくコントロールされていて、威張りくさった日本の軍人のイメージを一変させた。占領を成功させたのは、当時のアメリカ軍の質の高さです。
 日本人が良い社会を作ろうと努力し、世界に心を開いていれば、いずれ造られた誤解は解消する事に自信を持つべきです。
 
 
**  引っ越し先決定  * * * * *
 同じ熊川住所、十六号と五日市街道交差する所です。お彼岸頃までには引っ越しをして、お花見の会を開いて正式に引っ越し完了です。
 次号に詳しく載せます。郵便物などは転送するよう手続きしておきますので、今までの住所をお使い下さい。
 

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